臨床血液
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25 (EL2-3G)
輸血後鉄過剰症の診療
鈴木 隆浩
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2020 年 61 巻 9 号 p. 1205-1211

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抄録

難治性貧血疾患では赤血球輸血が必要とされるが,頻回の輸血は輸血後鉄過剰症のリスクとなる。過剰鉄は活性酸素種の産生を介して臓器障害を引き起こし,低リスクMDSでは高フェリチン血症が予後不良因子の一つであることが知られている。このため,輸血後鉄過剰症では鉄キレート療法が行われる。輸血依存になった患者は,定期的に血清フェリチン値を確認し,フェリチン値500 ng/ml以上および総赤血球輸血量20単位以上で輸血後鉄過剰症と診断される。鉄キレート療法はフェリチン値1,000 ng/ml以上で開始し,有害事象などの問題がなければフェリチン値が500 ng/ml未満になるまで治療を継続する。鉄キレート療法によって臓器障害は改善し,低リスクMDSでは臓器障害や死亡リスクの低減が期待される。一部症例では造血改善も認められるが,現時点では造血の改善を目的としたキレート療法は推奨されていない。

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© 2020 一般社団法人 日本血液学会
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