2021 年 62 巻 11 号 p. 1623-1627
乳糜胸は胸管破綻等による胸腔内乳糜漏出で,非外傷性の原因では悪性リンパ腫が最多である。症例は74歳女性。2019年3月に両側胸水と腸間膜・後腹膜腫瘤を指摘され当科受診,生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断した。5月に胸水貯留による呼吸困難で緊急入院となり,胸腔穿刺では大量の乳糜胸水を認めた。化学療法で病変は縮小するも乳糜胸の改善は乏しく,退院困難で管理に難渋した。リンパ管造影を行い,破綻部位に対して胸管塞栓術を複数回行い,胸膜癒着術を施行し乳糜胸は一旦改善した。しかし2020年5月に悪性リンパ腫の再燃を伴わず右乳糜胸が再発した。保存的加療で改善乏しく,再びリンパ管造影を施行したが,リンパ管経由の治療が困難であり,胸膜癒着術を4回行い改善した。乳糜胸はしばしば難治性で,悪性リンパ腫に対する化学療法で改善しない場合は多科連携による集学的な治療が有効である。