臨床血液
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症例報告
肝に多発性髄外形質細胞腫が診断された多発性骨髄腫と肺がんの同時性重複がん
小原 史也原田 靖彦谷川 吉政成田 道彦鏡味 良豊平賀 潤二
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2021 年 62 巻 7 号 p. 727-732

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抄録

症例は62歳女性。58歳時に多発性骨髄腫(MM)と原発性肺腺がんの同時性重複がんを診断された。Bortezomib・dexamethasone療法後,肺腺がんに対する治癒的胸腔鏡下左上葉切除術に引き続き,MMに対し自家末梢血幹細胞移植を施行されたが,9ヶ月でMMの再燃を認めた。その後,MMに対する複数のレジメンの化学療法を施行された。経過中肺腺がんの脳転移も認め,摘出術と放射線照射を施行された状態であった。肝胆道系酵素の上昇を認め,腹部超音波検査にて多発肝腫瘤を指摘されたが,血小板減少にて肝生検施行できず,かつMM治療中に増悪したため,肺がんの肝転移の可能性が高いと臨床的に判断した。上皮成長因子受容体変異陽性肺腺がんであったため,gefitinibによる化学療法を導入したが,腫瘍のコントロールができず死亡した。病理解剖の結果,肝多発腫瘤はMMによる形質細胞腫と判明した。同時性重複がん症例に対する治療に対して重要な症例であると考えられ,報告する。

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© 2021 一般社団法人 日本血液学会
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