臨床血液
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62 巻, 7 号
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Picture in Clinical Hematology
総説
  • 松下 麻衣子
    2021 年 62 巻 7 号 p. 709-716
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    従来,免疫抑制的に作用すると考えられていた抗がん剤などによって,逆にがんに対する免疫反応を活性化する免疫学的細胞死(immunogenic cell death, ICD)が起こる。ICDでは,一部の抗がん剤や,放射線照射,腫瘍溶解ウイルスなどによりがん細胞内で小胞体(ER)ストレスが高まり,calreticulin(CALR)を含むDAMPs(damage-associated molecular patterns)が放出されることによってがん細胞に対する獲得免疫系が活性化される。さらに,がん抗原に対する長期的な免疫記憶が構築されることによって患者の予後の改善をもたらす可能性が明らかになってきた。ICDはもともと固形腫瘍において発見された現象であったが,近年は急性白血病を含む造血器腫瘍における報告も見られる。またICD誘導剤をchimeric antigen receptor(CAR)-T療法など他の免疫療法と併用することによって抗腫瘍効果を増強する試みも行われている。従って,今後は造血器腫瘍の根治を目指すにあたって,ICD誘導効果を考慮した治療戦略を組み立てることが重要となる可能性がある。

症例報告
  • 松本 洋典, 杉谷 未央, 西川 理菜, 長田 浩明, 岩本 伸紀, 栗山 幸大, 大城 宗生, 平川 佳子, 岩井 俊樹, 稲葉 亨, 内 ...
    2021 年 62 巻 7 号 p. 717-720
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    49歳女性。44歳時に右乳がんに対し放射線治療,化学療法の施行歴がある。今回,健康診断で汎血球減少を指摘され当院受診となった。骨髄穿刺でMPO染色陰性の芽球を78.2%に認めた。フローサイトメトリーではCD10,CD19,CD22,CD34,CD38,HLA-DR,TdTが陽性であり,CD19,glycophorin A(GPA)を共発現している分画が認められた。染色体分析ではhyperdiploid(染色体数55本)であった。以上からB-lymphoblastic lymphoma/leukemia with hyperdiploidyと診断した。GPAは赤芽球系のマーカーであるが,WHO分類によるmixed phenotype acute leukemiaの診断基準には赤芽球系は含まれていない。赤芽球系とリンパ系のbiphenotypeの白血病が新たな疾患単位を形成するか,症例の蓄積が待たれる。

  • 久世 彩歌, 位田 奈緒子, 細野 奈穂子, 根来 英樹, 山内 高弘
    2021 年 62 巻 7 号 p. 721-726
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    38歳女性。全身倦怠感あり紹介医を受診し,採血で白血球増多を認め当科紹介入院となった。骨髄検査でMPO染色陰性の芽球を90%以上認め,cyCD3(+),CD5(+),CD7(+),CD34(+)が陽性でありearly T-cell precursor lymphoblastic leukemia(ETP-ALL)と診断した。2度の寛解導入療法で完全寛解を得た後,地固め療法を行ったが再発を認めた。再発時はMPO染色陽性であり,骨髄系表面抗原陽性かつT細胞系表面抗原陰性となり,acute myeloid leukemiaへlineage switchしたと判断した。その後の化学療法に対して治療抵抗性であり死亡の転帰となった。Lineage switchした際に提出した遺伝子検査からはNRASTP53変異に加えてMLLT-PICALM融合遺伝子も検出され,本症例の治療抵抗性の原因として,ETP-ALLとして未熟な前駆細胞が白血化しており,さらには複数の遺伝子異常が関与していることが考えられた。

  • 小原 史也, 原田 靖彦, 谷川 吉政, 成田 道彦, 鏡味 良豊, 平賀 潤二
    2021 年 62 巻 7 号 p. 727-732
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    症例は62歳女性。58歳時に多発性骨髄腫(MM)と原発性肺腺がんの同時性重複がんを診断された。Bortezomib・dexamethasone療法後,肺腺がんに対する治癒的胸腔鏡下左上葉切除術に引き続き,MMに対し自家末梢血幹細胞移植を施行されたが,9ヶ月でMMの再燃を認めた。その後,MMに対する複数のレジメンの化学療法を施行された。経過中肺腺がんの脳転移も認め,摘出術と放射線照射を施行された状態であった。肝胆道系酵素の上昇を認め,腹部超音波検査にて多発肝腫瘤を指摘されたが,血小板減少にて肝生検施行できず,かつMM治療中に増悪したため,肺がんの肝転移の可能性が高いと臨床的に判断した。上皮成長因子受容体変異陽性肺腺がんであったため,gefitinibによる化学療法を導入したが,腫瘍のコントロールができず死亡した。病理解剖の結果,肝多発腫瘤はMMによる形質細胞腫と判明した。同時性重複がん症例に対する治療に対して重要な症例であると考えられ,報告する。

第82回日本血液学会学術集会
Presidential Symposium 1
  • Kevin Y. URAYAMA
    2021 年 62 巻 7 号 p. 733-738
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    Despite the challenges involved in studying the epidemiology of a rare disease, the last two decades have provided considerable information regarding the probable causes of childhood leukemia, in which current evidence suggests an important role for genetic susceptibility and external factors originating from the environment. The genome-wide association study approach has led to the identification of several associated genes, thereby confirming the polygenic nature of childhood leukemia. Ongoing studies have shown that many of these loci, which were originally identified in populations of European ancestry, are also important in the Japanese population. Regarding potential external exposures, increasing evidence is becoming available to elucidate the role of infectious agents and the influence of immune maturation in early life. Epidemiological evidence supports the prevailing hypotheses related to the effect of population mixing on transient increases in the childhood leukemia rates, as well as the role of delayed exposures to common infections in propagating an aberrant immune response and subsequent leukemia risk. Future advances in the investigation of childhood leukemia and other rare diseases along with coordinated studies and collaborations are needed, owing to stringent sample size requirements to support statistically robust comparisons and opportunities for independent validation.

  • 平尾 敦
    2021 年 62 巻 7 号 p. 739-743
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    腸内細菌叢は,腸管免疫のほか,様々な段階で造血制御に関与している。腸内細菌叢の多様性は,同種造血幹細胞移植の予後予測に有用性を発揮するなど,その生理的・病理的意義は大きい。最近の研究により,過食や高脂肪食による造血幹細胞の異常には,腸内細菌叢が介在した骨髄微小環境変化が重要であることが示された。また,RAS-MAPK活性化あるいはTET2変異を伴う骨髄増殖性腫瘍の増悪過程への関与,白血病細胞の病態における寄与に関する報告がなされている。そのメカニズムとして,腸内細菌由来代謝物の生物学的活性,インスリン分泌低下やインスリン抵抗性が原因となる糖代謝異常,腸上皮バリアの傷害による腸管透過性亢進など,興味深い知見が示された。今後,腸内細菌からのアプローチにより,造血研究に関する新たな分野が切り拓かれ,将来,血液疾患の予防,治療,診断などの発展に貢献することが期待される。

Presidential Symposium 2
  • 松岡 雅雄
    2021 年 62 巻 7 号 p. 744-750
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は感染細胞を介してのみ感染するために,生体内では感染細胞を増やすという戦略を取っている。次の個体に感染するために,感染細胞は生体内で増殖し免疫系からの攻撃を回避して母乳等へ移行する必要がある。HTLV-1は感染細胞をHTLV-1 bZIP factor(HBZ)によって,制御性Tリンパ球様へと変換することにより宿主免疫から逃避している。またTaxは新規感染に必須であるが免疫原性が高いために,HTLV-1はTaxを一過性に発現することによって宿主免疫に認識される危険性を最小化している。HBZは感染細胞の増殖・生存に重要である。HTLV-1は炎症と発がんを引き起こすが,この2つは密接に関連している。このようなウイルスの生き残り戦略が成人T細胞白血病(ATL),炎症性疾患の発症・病態と深く関連している。

  • 内丸 薫
    2021 年 62 巻 7 号 p. 751-759
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    わが国におけるHTLV-1キャリアの数は,献血における抗HTLV-1抗体陽性者数から推定されており,最新の調査では約82万人と推定されている。感染予防対策の中心になっているのは妊婦の抗HTLV-1抗体スクリーニングと抗体陽性授乳婦に対する授乳指導である。年間約1,200人が抗体陽性妊婦と診断され,おもに人工乳哺育の指導がなされている。しかし,母乳の授乳ができなかったことに対する心のケア,キャリアと判明したことに対する相談指導体制が不十分であり,拠点施設の選定と地域医療機関,保健所などのネットワークの構築が望まれる。ATL発症ハイリスクキャリアの同定は重要な課題であり,JSPFADなどのレジストリー研究をベースにフローサイトメトリーによる検討,マルチオミックス解析などのデータが蓄積されつつある。今後これらのハイリスクキャリアに対するpre-emptiveな治療に有効な薬剤の開発が急務である。

  • —全国実態調査の結果から—
    今泉 芳孝
    2021 年 62 巻 7 号 p. 760-765
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    全国調査は成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の病態や予後の理解に重要な役割を果たしてきた。1980年代に診断されたATLを対象とした全国調査の結果,臨床病型分類の診断基準が提唱された。ATLの診療指針は現在もこの病型分類に基づいている。2000年から2009年に診断されたATLを対象とした全国調査でも,この病型分類の有用性は確認された。また,この調査では慢性型・くすぶり型ATLの新たな予後因子として可溶性インターロイキン2受容体が示された。2010年と2011年に診断されたATLを対象として我々が行った全国実態調査では,ATL発症年齢の中央値は68歳と,過去の報告と比較して高齢化を認めた。引き続いて行われた予後調査では,過去の報告と比較して,急性型とリンパ腫型では4年生存割合の改善を認めたが,慢性型とくすぶり型の予後は改善が乏しかった。今後も目的に応じた全国調査研究の実施が望まれる。

  • 石塚 賢治
    2021 年 62 巻 7 号 p. 766-773
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルスI型が原因の末梢性T細胞腫瘍で,aggressive ATLとindolent ATLに二分し治療が行われてきた。70歳以下のaggressive ATLに対してはVCAP-AMP-VECP療法が標準治療とされ,さらに可能な限り同種造血幹細胞移植が実施されている。新規薬剤としてmogamulizumab,lenalidomide,brentuximab vedotinが導入され,再発・難治例に対しHDAC阻害薬が承認申請中,EZH1/EZH2阻害薬は第II相試験の登録が終了している。Indolent ATLに対しては無治療経過観察が行われてきたが,海外で頻用されるinterferon-αとzidovudineの併用療法について,本邦で前向き臨床試験を実施している。今後ATL患者は高齢化が進むことから,未だ全く決定されていない高齢者に対する標準治療の開発が重要になる。

Symposium 5
  • 橋本 真里, 石川 文彦
    2021 年 62 巻 7 号 p. 774-780
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    がん治療を困難とする要因として,がんにおける遺伝的背景の多様性と複雑性がある。そこで本研究では,遺伝子解析と臨床情報,そしてin vivo/in vitro実験における結果を統合し,遺伝的に多様な治療抵抗性の再発性急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)に対する治療標的の同定を目的とした。まず,RNA-seq解析とchemical screeningの結果から,抗アポトーシス,細胞周期,そして細胞分裂を標的とする低分子化合物に対して,患者由来AML細胞が異なる感受性プロファイルを示すことを明らかとした。さらに,IDH1/2変異を有するAMLはBCL2阻害に高い感受性を示す一方で,FLT3,NRASおよびCBL変異を有する症例においては,細胞質に発現する抗アポトーシスタンパク質であるIAPの阻害に対し高い感受性が認められた。体細胞変異に紐づく発がん機序の違いに応じた治療法の最適化は,骨髄性白血病のみならず,ほかのがん種にも応用されることが期待される。

Symposium 7
  • 野上 恵嗣
    2021 年 62 巻 7 号 p. 781-789
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    血液凝固第VIII因子(FVIII)は,凝固反応においてリン脂質膜上で活性型第IX因子の補因子として機能する。FVIIIの欠乏は血友病Aであり,逆に,血栓症患者のFVIIIは高値を示すことから,FVIIIは出血と血栓の相反する病態に関わる凝固因子である。FVIII分子の結晶構造やFVIII補因子機能代替bispecific抗体から,FXase複合体上のFVIIIa機能と役割が注目されている。凝固過程の初期相に関与する凝固外因系,thrombin burstに関わる内因系,活性型プロテインC経路による凝固抑制系,fibrin clotを溶解する線溶系が,凝固反応過程中は絡み合い進行していく概念も支持されている。FVIII-外因系制御やFVIII-線溶系制御の解明もされてきており,近年のFVIII/FVIIIaを中心とした血栓形成機序への発展的な解明は,安全かつ有効な新規FVIII製剤や抗血栓薬の開発につながると期待される。

  • 矢田 弘史
    2021 年 62 巻 7 号 p. 790-800
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    血友病患者のインヒビター発生要因として,さまざまな患者関連および治療関連因子が欧米諸国の先行調査研究により明らかにされつつあるが,日本の血友病患者における治療とインヒビター発生の実態については不明であった。そこで,2008年にJ-HIS(Japan Hemophilia Inhibitor Study)研究班が発足し,日本のインヒビター発生血友病患者の実態に関する後方視的研究(J-HIS1)に続いて,新規診断された血友病患者の前方視的追跡調査によるインヒビター発生要因の検討と患者データベース構築を目的とした多施設共同研究(J-HIS2)が開始された。約10年間に及ぶ研究の結果,日本の血友病患者のインヒビター発生は25製剤曝露日までに集中し,重症血友病Aでは,null型F8遺伝子変異および頭蓋内出血がインヒビター発生リスクを高め,早期の定期補充療法導入がリスクを低減することが判明した。

Symposium 9
  • 古賀 友紀, 東矢 俊一郎, 實藤 雅文, 野田 優子, 谷村 雅子, 別所 文雄, 大賀 正一
    2021 年 62 巻 7 号 p. 801-808
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    小児がん全国登録より,親の年齢または放射線被ばくと小児がん発症の関連を解析した。1985~2007年に発症した小児白血病(n=5,510)とその他のがん(n=8,782)を対象に,出生時の親の年齢を調査した。その他のがんに比べ,母親が40歳以上であった乳児白血病の割合が有意に高かった(OR 2.55,p=0.031)。1969~2006年に発症した小児白血病(n=11,110)とその他のがん(n=16,235)を対象に,妊娠中に放射線照射を受けた母親の割合を調査した。1969~76年(OR 1.25)および1977~84年(OR 1.39)において,白血病は胎児期放射線照射の割合が有意に高かった。自施設にて,cyclophosphamide(CPM)投与を受けた小児がん患者(n=15)の付き添い家族(母)と医療スタッフにおける抗がん剤曝露(尿中CPM濃度)を検討した。乳児7人中5人と学童期以降8人中2人の母よりCPMが検出されたが,医療スタッフは感度未満であった。小児がん発症には遺伝性素因と環境要因のいずれもが関与する。児と母親に遺伝毒性をもたらす環境要因を軽減させることは重要な課題である。

  • 江口 真理子
    2021 年 62 巻 7 号 p. 809-819
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    乳児期の急性リンパ性白血病(ALL)は未だ治療抵抗性の白血病であり,長期予後の改善も十分ではない。乳児期のALLは染色体11q23領域の転座を有することが多く,11q23領域に存在するMLLKMT2A)遺伝子の再構成と融合遺伝子形成が認められる。多数の遺伝子が転座によりMLLと融合するが,特に染色体4q21に存在するAF4AFF1)遺伝子との融合で形成されるMLL-AF4KMT2A-AFF1)融合遺伝子は乳児ALLに特徴的な予後不良因子である。MLL-AF4陽性の乳児ALLでは初期の白血病細胞は胎生期に生じている。多くの白血病モデルの解析からMLL-AF4による腫瘍化の標的細胞はMLL-AF9KMT2A-MLLT3)やMLL-ENLKMT2A-MLLT1)とは異なり骨髄の造血前駆細胞ではなく,胎生期の胎児肝などに存在する初期の造血前駆細胞である可能性が指摘されている。またさらに未分化な,造血細胞分化に方向付けされる前の中胚葉細胞が標的となっている可能性もある。MLL-AF4による乳児ALLの発症過程を解明することで,予後不良な乳児ALLの発症前診断や発症予防につながる可能性もあり,今後の研究の進展が望まれる。

Women Doctors Symposium
  • 牛島 洋子
    2021 年 62 巻 7 号 p. 820-829
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    血液内科を専門とする医師の女性比率は20%台前半と医師全体における比率と類似しており,徐々に増加してきている。女性医師の特徴の一つとして働き方の多様性があり,その増加は多様なキャリア形成に対する認識を高める契機となってきた。キャリア形成の基礎となるキャリア継続のためには,労働環境改善や男女共同参画社会の実現といった環境整備,また,医師としての意識や姿勢が必要と考えられている。後者の点から,すべての医師が修得すべき目標として,医師としての社会的使命感,キャリアデザイン立案能力,職業に対する多様な価値観を受容する能力,支援に対する姿勢,社会的性差の認識とその対応能力,が医学教育学会より提示されている。学習時期ごとの具体的目標として,キャリアデザイン立案の点では,専門医資格取得のプロセスを理解することや多彩なロールモデル像を知ることなどが挙げられており,新血液専門医プログラムの理解はその1例である。

  • 平安山 知子
    2021 年 62 巻 7 号 p. 830-834
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    血液疾患の治療においてはチーム医療の意識が浸透し,看護師などのメディカルスタッフや他部門との連携が不可欠となった。筆者が従事している輸血部門は,輸血療法のみならず造血幹細胞移植支援を担っており,血液内科に関わりの深い部門の一つと言える。そこで求められる医師の役割は,中央診療部としての製剤適正使用のための管理,指導など院内の業務から他施設の医療スタッフや献血ドナーへの教育啓発といった院外の活動まで多岐にわたる。さらに筆者の施設では,細胞採取も輸血部門で実施しており,近年は,造血幹細胞移植症例の増加やCAR-T療法といった新規細胞治療の開始に伴い,細胞アフェレーシスや細胞管理における役割も期待されるようになってきた。筆者が,結婚・出産を機に輸血医療を選択し,細胞採取を中心とする血液内科医に至った経験を,血液内科の多様なキャリアプランの一つとして提示したい。血液内科医の活躍の場は幅広い。

  • 新井 文子
    2021 年 62 巻 7 号 p. 835-845
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/05
    ジャーナル 認証あり

    慢性活動性Epstein-Barrウイルス感染症(CAEBV)は,持続する炎症症状に,EBVに感染したTもしくはNK細胞の腫瘍性増殖を伴う進行性の疾患である。EBV感染腫瘍細胞を除去し得る有効な薬物治療法は未確立で,現在の唯一の根治療法は同種造血幹細胞移植である。これまでCAEBVの報告は日本を中心とする東アジアに限定されてきた。しかし2017年に改訂されたWHO造血器腫瘍分類にT, NK細胞腫瘍として記載された後,CAEBVは世界的に注目され報告が増えている。私達はCAEBVのEBV感染腫瘍細胞でSTAT3が恒常的に活性化し,細胞の不死化と炎症性サイトカインの産生に関与することを見出した。その知見に基づきSTAT3を阻害するJAK1/2阻害剤,ruxolitinibの効果を検証する医師主導治験を2019年1月から開始した。CAEBVの病態解明,診断法,治療法の開発が,本邦の研究者に期待されている。

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