2022 年 63 巻 10 号 p. 1373-1378
症例は33歳,女性。腰背部痛の精査にて高IgG血症,高カルシウム血症,脊椎・骨盤の溶骨性病変を認めたため当科を紹介受診した。18F-FDG-PET/CTにて多発性の骨への集積,骨髄検査にて形質細胞の増加(10.2%)を認めたことから多発性骨髄腫が疑われた。しかし血清M蛋白や遊離軽鎖制限など形質細胞性腫瘍を示唆する所見を認めなかった。再度骨髄検査を施行し,生検検体にて造血系や上皮系抗原の発現を欠き,クロモグラニンAおよびシナプトフィジン発現を伴う異常細胞を認め,副腎外腫瘍を伴うことから悪性パラガングリオーマと診断した。本疾患は,骨転移と骨関連有害事象が高頻度に認められるために,多発性骨髄腫に類似した臨床像を呈することがある。溶骨性骨病変,高カルシウム血症,高ガンマグロブリン血症を伴う症例は血液内科受診となることが多いため,鑑別疾患として悪性パラガングリオーマも念頭に置く必要がある。