臨床血液
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症例報告
無症候性の急性前骨髄球性白血病における末梢血WT1 mRNA測定の有用性
江田 仁海渡部 伸一朗小笠原 史也佐伯 恭昌吉田 将平砥谷 和人武内 あか里宮﨑 詩織小島 研介
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2022 年 63 巻 11 号 p. 1520-1524

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抄録

急性前骨髄球性白血病(APL)における診断補助としての末梢血WT1 mRNA検出の意義を報告する。患者は55歳,女性。健康診断で白血球減少を指摘された。好中球減少を認めたが貧血や血小板減少,生化学検査異常はなく,末梢血塗抹標本の顕微鏡観察でも幼若細胞を認めなかった。播種性血管内凝固症候群や感染の合併も認めなかった。好中球減少以外の有意な異常として,末梢血WT1 mRNA量の著増(26,000 copies/µg RNA)を認めた。骨髄検査により,t(15;17)を有するAPLと診断した。フローサイトメトリーによるMPOとCD117共発現細胞,定量的RT-PCRによるPML-RARAおよびWT1発現を,末梢血と骨髄サンプルで比較検討したところ,WT1 mRNA発現量はPML-RARA キメラmRNA発現量と比較して遜色ないレベルであった。急性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群の診断補助に優れた有用性を示す末梢血WT1 mRNA定量は,僅かに存在するAPL細胞を高感度に検出すると期待される。

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© 2022 一般社団法人 日本血液学会
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