2022 年 63 巻 12 号 p. 1657-1667
成熟T細胞性腫瘍である末梢性T細胞リンパ腫は,標準的な治療法が存在せず,未だに予後不良の疾患群である。2016年改訂版のWHO分類において末梢性T細胞リンパ腫・非定型の中に,血管免疫芽球性T細胞リンパ腫と類似した患者群が存在していることから,nodal T-cell lymphoma with TFH phenotypeという疾患群が新設された。その疾患群の一種である血管免疫芽球性T細胞リンパ腫の患者検体から検出された,VAV1遺伝子の変異をT細胞特異的にマウスで発現させ,T細胞性リンパ芽球性リンパ腫と新たに提唱されている疾患群であるPTCL-GATA3を模倣した腫瘍を発症するモデルマウスを作製することに成功した。遺伝子異常や発現の違いにより,さらに細分化された疾患群が提唱されており,より個別化した治療方針をこれらのモデルマウスを解析することにより提案できる可能性がある。