2022 年 63 巻 7 号 p. 782-789
キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor, CAR)導入T細胞療法は,既に実臨床で用いられているCD19を標的としたB細胞性腫瘍に対する治療から,今後は固形がんに対しても適応拡大が期待される。その上で自己T細胞から個別にCAR-T細胞を製造することに関わるコスト,T細胞の質のばらつきなどが問題となっており,これを解決するために他家由来,すなわち健常人ドナーから大量にCAR-T細胞製造して使用する,“universal CAR-T cell”が注目されている。Universal CAR-T細胞療法を標準治療として確立する上で,治療効果・安全性の検証が臨床試験において進められている。特にドナー・レシピエント双方向のアロ免疫反応を抑制することがポイントとなり,主に遺伝子改変による免疫原性の減弱がはかられているが,これまでの臨床試験では十分な効果が確認されていない。またゲノム編集に伴う染色体異常が生じることが報告されており,安全性の確立も今後の課題であり,これらについて本稿で概説する。