2022 年 63 巻 7 号 p. 791-798
生後1歳未満に発症する乳児急性リンパ性白血病(ALL)は,本邦では年間20例前後発症の希少疾患である。乳児ALLでは,その70~80%で予後不良因子であるKMT2A遺伝子再構成(KMT2A-r)が認められるが,とくにこのKMT2A-rALLは5年無イベント生存率50%以下と極めて予後不良である。国内外の臨床試験の積み重ねによって,徐々に治療成績の向上が得られる傾向にあるが,未だ満足いくものではない。さらに長期生存が得られた症例においても,乳児期に侵襲的な治療を行うことによる重篤な晩期合併症が問題となっている。今後,乳児ALLの治療成績の向上のためには,既存の治療の強化だけでなく,より毒性が少なく効果の高い新規薬剤を用いた新規の治療戦略の確立が重要であり,その希少性から国際共同研究でより高いエビデンスに基づく治療開発を行う必要があると考えられる。