臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
特集:小児・AYA急性リンパ性白血病の治療開発の歴史と将来
乳児急性リンパ性白血病の治療戦略
宮村 能子
著者情報
ジャーナル 認証あり

2022 年 63 巻 7 号 p. 791-798

詳細
抄録

生後1歳未満に発症する乳児急性リンパ性白血病(ALL)は,本邦では年間20例前後発症の希少疾患である。乳児ALLでは,その70~80%で予後不良因子であるKMT2A遺伝子再構成(KMT2A-r)が認められるが,とくにこのKMT2A-rALLは5年無イベント生存率50%以下と極めて予後不良である。国内外の臨床試験の積み重ねによって,徐々に治療成績の向上が得られる傾向にあるが,未だ満足いくものではない。さらに長期生存が得られた症例においても,乳児期に侵襲的な治療を行うことによる重篤な晩期合併症が問題となっている。今後,乳児ALLの治療成績の向上のためには,既存の治療の強化だけでなく,より毒性が少なく効果の高い新規薬剤を用いた新規の治療戦略の確立が重要であり,その希少性から国際共同研究でより高いエビデンスに基づく治療開発を行う必要があると考えられる。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top