2023 年 64 巻 10 号 p. 1258-1265
3番染色体の逆位または転座に代表されるEVI1再構成を伴うAMLはEVI1の高発現を特徴とする予後不良な病型である。我々はEVI1再構成を伴う骨髄性腫瘍において高頻度に合併する遺伝子変異の中でもSF3B1変異に着目し,忠実なマウスモデルの解析を通じて両異常が協調して白血病発症を誘導することを示した。さらに興味深いことに,SF3B1変異が惹起する異常スプライシングにより,野生型EVI1のDNA結合ドメインの近傍に6アミノ酸が挿入された異常なアイソフォームが特異的に誘導されることを発見した。このアイソフォームは野生型EVI1と比較してマウス造血幹細胞の自己複製能を有意に亢進させた。また,この異常スプライシングの誘導に必要な分枝部位およびシスエレメントも併せて同定した。これらの結果は予後不良なEVI1再構成を伴うAMLの分子機構をより詳細に解明し治療応用へ繋げる為の基盤を築くものであると考える。