臨床血液
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特集:実地診療における免疫学のトピックとそのアプローチ
成人における先天性免疫不全症の診療
金兼 弘和
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2023 年 64 巻 8 号 p. 772-781

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抄録

免疫不全症とは免疫にかかわる分子の異常によって発症し,その原因遺伝子は500近くに及ぶ。症状も易感染性のみならず,自己免疫疾患,悪性腫瘍,自己炎症性疾患,アレルギーを合併することから,免疫不全症というよりは先天性免疫異常症(inborn errors of immunity, IEI)として捉えられる。IEIは遺伝子変異を有することが多く,小児期に発症すると考えられがちであるが,成人発症のIEIも少なからず存在する。昨今の治療の向上から成人期にキャリーオーバーする小児期発症IEI患者も多く,IEI患者の半数は成人と考えられる。IEIの診断は小児同様に10の徴候を参考に,易感染性の存在に早く気づくことであり,診断は4ステップで行い,遺伝子解析による最終診断を行う。IEIの治療は抗菌薬の予防内服や免疫グロブリン補充療法に加えて,一部の患者では根治的治療として同種造血細胞移植(hematopoietic cell transplantation, HCT)が行われる。しかし成人IEI患者では合併症のためにHCTを断念せざると得ないこともある。成人IEI患者ではHCT適応を速やかに判断し,合併症が増える前にHCTを行う必要がある。

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© 2023 一般社団法人 日本血液学会
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