2023 年 64 巻 9 号 p. 1026-1031
びまん性大細胞型リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)は臨床的・生物学的に不均一な疾患であり,その分類と対応する治療の開発に多大な労力が費やされてきた。2000年代初頭のrituximab併用化学療法の登場により予後の大幅な改善がみられたものの未だに約40%の症例で再発がみられ,再発症例はdose-intensityを高めた化学療法を行うも予後不良である。最近,polatuzumab vedotinやCAR-T療法の登場により,本疾患患者の予後改善が期待されるが,これらの治療が有効である患者群の同定が極めて重要である。そのためにはDLBCLの分子病態のさらなる理解が必須であるが,近年の遺伝子解析技術の進歩により,未知の遺伝子異常や遺伝子発現パターンが発見され,最近では免疫微小環境との関連性も指摘されている。このような分子病態の解明と疾患の細分類化は,今後のDLBCLの個別化医療の土台として臨床医も認識すべき点である。