臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
29 (EL1-4-6)
多発性骨髄腫に伴う感染症の予防と治療
黒田 芳明
著者情報
ジャーナル 認証あり

2023 年 64 巻 9 号 p. 1083-1091

詳細
抄録

多発性骨髄腫は新規薬剤の登場により治療奏効や生存期間の延長が認められている一方で,感染症の合併は治療の継続を妨げ直接的・間接的に重大な死因の一つとなっている。骨髄腫患者は,骨髄腫の病態そのものや,高齢,臓器合併症,骨髄腫治療などの影響を受け免疫機能の低下状態にある。特に診断後3ヶ月の間や,再発時には感染リスクは増加する。骨髄腫治療は用いる薬剤により様々な機序で免疫機能を抑制する。例えばプロテアソーム阻害薬はT細胞を抑制しウイルス感染リスクを上げ,lenalidomide・pomalidomideなどの免疫調整薬(immunomodulatory drugs, IMids)は好中球減少を減少させ細菌感染リスクを増加させる。抗CD38抗体はB細胞機能を抑制することで液性免疫不全を来し細菌感染・ウイルス再活性化を増加させる。骨髄腫患者の感染リスクを低下させ治療を遂行するためにもこれらのリスクを把握し,予防薬やワクチンを用いて適切に対応する必要がある。

著者関連情報
© 2023 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top