2023 年 64 巻 9 号 p. 853-860
生体防御に関わる好中球に代表される顆粒球や,単球のような単核貪食細胞を産み出す骨髄球系造血では,造血幹細胞および前駆細胞における増殖や分化が高度に制御されており,定常状態のみならず,微生物感染や組織損傷による炎症惹起時にも,需要に応じた適正な細胞供給が行われる。このような骨髄球系造血の制御にはC/EBPαやC/EBPβなどC/EBPファミリーに属する転写因子が中心的な役割を果たしており,骨髄球系造血の破綻には,必然的にこれらの制御機構の変調が伴う。近年,炎症刺激が長期にわたるエピジェネティックな記憶を造血幹細胞や前駆細胞にもたらすことや,遺伝子異常を持つクローン性造血が,炎症を介して拡大し,宿主の健康状態に大きな影響を及ぼすことが明らかとなってきた。今後,基礎研究と臨床研究が協調して骨髄球系造血の制御機構理解が進むことによって,様々な疾患の治療および予防をも視野に入れた戦略の確立が期待される。