臨床血液
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特集:臨床血液学2024 ―最新情報と今後の展望(赤血球系疾患)―
寒冷凝集素症の病態・診断・治療
和田 秀穂
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2024 年 65 巻 6 号 p. 521-528

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抄録

Cold agglutinin disease(CAD)は補体依存性の古典的経路を介する免疫性溶血性疾患であり,autoimmune hemolytic anemia(AIHA)の約8%を占める。原発性CADはIgM型M蛋白を産生する骨髄のクローン性B細胞リンパ増殖性疾患であり,従来の続発性CADはcold agglutinin syndrome(CAS)と呼ぶ。臨床所見は溶血による慢性貧血と,寒冷曝露下の赤血球凝集による末梢循環不全に伴う症状に大別される。すべての患者が薬物治療を必要とするわけではないが,前者には補体C1sに対するモノクローナル抗体薬,後者にはB細胞抑制薬による治療が優先される。温式AIHAとは治療法が異なるため,誤診は治療結果に大きな影響を及ぼす。血液検査において最も重要な点は検体の温度管理である。CA価,IgMの定量,電気泳動法,免疫固定法は血清分離まで37~38°Cに温度管理した血清を用いないと偽陰性の結果をもたらす可能性がある。CADの多彩な臨床的特徴に関する知識とともに検体の正しい取り扱いが,正しい診断と適切な治療に結びつく。

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© 2024 一般社団法人 日本血液学会
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