臨床血液
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症例報告
キメラ抗原受容体T細胞療法および同種造血幹細胞移植を施行した再発難治性中枢神経系原発悪性リンパ腫
藤井 郁成寺尾 俊紀西森 久和藤井 謙太郎松尾 俊彦吉野 正植田 裕子大山 矩史松村 彰文近藤 歌穂松原 千哲藤原 加奈子清家 圭介藤原 英晃淺田 騰遠西 大輔藤井 敬子藤井 伸治松岡 賢市前田 嘉信
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2024 年 65 巻 7 号 p. 622-627

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抄録

症例は57歳男性。2015年12月に左顔面のしびれ感を主訴に受診し,中枢神経系原発悪性リンパ腫と診断された。大量methotrexateを基盤とした化学療法と自家末梢血幹細胞移植により完全寛解を得たが,その後再発と寛解を繰り返したため,キメラ抗原受容体T細胞療法(tisagenlecleucel)を施行した。投与前の病勢評価は完全寛解であり,サイトカイン放出症候群や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群は認めなかった。しかし,投与から28日後に再発したため,根治を目指し同種造血幹細胞移植を施行した。同種移植により一時的な寛解を得たが,移植後98日目に再発した。その後,tirabrutinib等で病勢は制御できたものの,移植関連肺障害による急性呼吸不全と移植後血栓性微小血管障害症を生じ,移植後175日目に永眠された。中枢神経系原発悪性リンパ腫は,近年様々な治療法が検討されているものの,本症例のような再発難治例に対する治療は確立されておらず,治療戦略の検討が必要である。

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© 2024 一般社団法人 日本血液学会
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