2024 年 65 巻 9 号 p. 954-960
EVI1はMECOM遺伝子座にコードされる亜鉛フィンガー型転写因子で,造血幹細胞の発生・維持に必須だが,骨髄系腫瘍における高発現は化学療法抵抗性,不良な転帰と関連する。MECOM遺伝子座は,異なる作用を有し独立して制御される複数のアイソフォームをコードし,その産物のうちEVI1は様々なドメインを介して多彩な転写因子・エピジェネティック因子と相互作用し,転写活性化・抑制,他の転写因子の活性制御,クロマチンリモデリングを含む多様な機序によって,細胞の生存・分化・増殖といった挙動を調節する。3q26転座によって骨髄系の発生に関与する遺伝子のエンハンサーがハイジャックされることでEVI1高発現につながる機序は解明されつつあるが,染色体転座のない例や正常造血におけるEVI1の発現制御には不明な点が多い。EVI1の発現制御機構,作用機構の理解に基づく,EVI1標的治療の開発が期待されている。