2024 年 30 巻 p. 363-368
気候変動による水資源管理への影響の俯瞰的な把握に資することを目的として,本研究においては,96の 1級水系を対象に,地域気候モデルの出力を用いて流出解析を行い,過去実験及び将来実験の渇水流量(1年間365日の日流量を大きい順に並べた355番目の流量)が,過去実験の非超過確率1/10の渇水年の渇水流量以下となる年の発生頻度の変化を計算した.その結果,この発生頻度の変化は,96水系の平均値で,2°C上昇実験では過去実験の2.20倍となり,4°C上昇実験では過去実験の4.84倍となった.また,この発生頻度の変化が1倍以上となる水系の数は,2°C上昇実験では90水系(94%),4°C上昇実験では94(98%)となった.これらの計算結果は,気候変動下では,ほぼ全国的にこの発生頻度は増加し,その程度は,現状の利水安全度の確率規模を大きく低下させる蓋然性が確認されたものと考える.そのため,温室効果ガスの削減は元より,気候変動を踏まえた水資源政策及びそれを支える調査研究の深化・加速化が必要と考える.