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2025 年31 巻 p.
0-
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
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福岡 捷二
2025 年31 巻 p.
K_1-K_17
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
気候変動による想定を大きく超える自然外力は,社会,経済に大きな変化をもたらし,これまでの自然,社会,経済条件下での河川改修の進め方やスピードでは,洪水災害への対応が遅れ,災害の増大を引き起こす恐れが非常に大きい.流域治水への転換を図り,国土強靭化が叫ばれている今こそ,今後の流域・河川のあり方やその技術について十分考え変革し,社会の要請にこたえる絶好のタイミングである.
本文では,我が国で行われてきた河川改修や,河川技術の蓄積がこれまでの川づくりにどのように活かされて来たか,河川改修を加速し治水の安全性の確保や治水と環境の調和の実現に向けて流域治水をどのように進めて行くべきか,特に,超過洪水に対する河道計画をどのように実行するかは流域治水の成否に関わる大きな課題である.それには河川管理施設等構造令の見直しや,河川の土砂水理学の再構築等が必要である.半世紀を超える著者の河川技術研究,河川及び河川技術者等との対話を通して,これからの河川技術・研究はどうあって欲しいかについて論じている.
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鈴木 敏弘, 森本 洋一, 都築 隆禎, 中村 圭吾, 瀧 健太郎
2025 年31 巻 p.
1-6
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
河川植生は,生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観の基本となる環境要素であり,河川植生の保全・創出においては,成立要因とその変遷を踏まえる必要があるが,全国の視点で植生タイプを類型化することでその成立要因と変遷を示した研究はこれまでにない.本研究では,河川植生の保全・創出への活用を目的として,全国河川のセグメント区分を反映した約20年間の植生図データを用いて,TWINSPAN分析による類型化を行い,「樹林地景観類型」,「草地景観類型」の河川環境管理に資する類型化手法を提案した.「草地景観類型」では,河川ごとに本来成立しうる植生タイプを示すため在来種優占群落による類型とした.得られた類型は気候的要因とセグメント区分により代表される地形的要因により成立することを確認した.さらに,草地景観類型の変遷パターンを「継続」,「消長」に分類することで地域ごとの特性を踏まえた河川環境の状態把握が可能となった.この結果をもとに,「継続」を保全の目安とし,「消長」を保全と創出の目安とする,河川植生の保全・創出戦略の検討方法を提案した.
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滝山 路人, 赤松 良久, 乾 隆帝, 宮園 誠二, 中尾 遼平
2025 年31 巻 p.
7-12
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
筑後川水系では平成29年7月の甚大な豪雨災害により,大規模な出水が発生した.大規模出水が及ぼす生態系への影響や,その後の回復過程を明らかにすることは,河川管理を行う上で重要である.本研究では,環境DNA定量メタバーコーディング法を用いて,筑後川水系における出水後の魚類相回復過程についてモニタリングを行った.魚種数及び環境DNA濃度は出水直後に被害の少ない対照区支川で本川や被災地支川よりも高く,その後本川や被災地支川で回復する傾向が見られた.構成比に着目したSimpson多様度指数は,出水後に流域全体で高く,その後は低下する傾向が見られた.これにより,出水直後は下流へ魚類が押し流されたことや,出水の影響の少ない区間へと移動し,一時的に魚種間の生物量の差が減少したことで多様度が高くなったことが考えられた.さらに,その後各魚種が元の生息場に戻ることで,優占種の影響が増大し,多様度が低下したことが示唆された.NMDSの結果,一部の被災地支川の魚類群集構造が異なる傾向にあり,被災地支川での河川環境や改修工事等により,魚類の生息が困難となったことが示唆された.
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鬼束 幸樹, 渡邊 杏咲, 河村 凌輝, 吉田 瑞矢
2025 年31 巻 p.
13-18
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
魚が生息可能な環境整備を進める上で,魚の避難・休息場となるカバーの整備および保全は不可欠である.一般に魚はオーバーハング下を選好する.加えて,当該領域に底面粗度を付加することで,オーバーハング下を選好した魚がより定位し易いと推定される.本研究では,開水路片岸に連結水制を設置し,オーバーハングの有無,連結水制の配列および流速がオイカワの休息特性に及ぼす影響を検討した.その結果,オイカワはオーバーハング下を選好して遊泳した.また,オーバーハングを設置することで,高流速域を遊泳するオイカワが,低流速域での休息をより短時間で決断し,低流速域への進入頻度が増加した.したがって,オーバーハングを設置することで,オイカワの低流速域への誘導を短時間で行えることが判明した.一方,水制の配列の変化がオイカワの休息特性に及ぼす影響は明確には確認されなかった.したがって,水制の配列の変化よりもオーバーハングの有無の方が,オイカワの休息特性に支配的な影響を及ぼすことが判明した.
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村上 純一, 川口 究, 中田 裕章, 衣川 涼子, 齋藤 靖史, 福永 葵衣, 河野 誉仁, 林田 寿文
2025 年31 巻 p.
19-24
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
近年の河川管理においては,国土交通省提言の「生物の生息・生育・繁殖の場」に関する定量的な目標設定が求められている.しかし,汽水域では潮汐などの影響や長期的な河床変動等を考慮する必要があり,実務における定量目標設定や環境評価の手法が確立されていない.本研究では,荒川下流における河道掘削の汽水環境への影響を評価するため,iRICの環境評価ソルバであるEvaTRiP Proを活用し,汽水環境を定量評価するツール「汽水環境評価ツール」を開発した.本ツールは,汽水生物が選好する相対潮汐地盤高を設定することで,対象生物の生育・生息適地分布の予測を可能にした.予測の再現性を検証した結果,全正答率96%という精度が得られた.本ツールを用いて河道掘削の影響評価を行った結果,ヨシの生育適地は掘削により一時的に減少するものの,将来的には現況よりも増加すること,クロベンケイガニの生息適地や干潟(潮間帯)面積は河道掘削により増加し,将来的にも維持されることが予測され,将来的に良好な汽水環境の維持・創出につながると評価された.
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松村 颯馬, 井上 卓也
2025 年31 巻 p.
25-30
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
海洋におけるマイクロプラスチック(MP)汚染が深刻化しており,その主要な供給源の一つとして河川が注目されている.河川でのMPの流出を抑制するためには,MPの輸送・堆積メカニズムを解明し,効率的な回収手法を確立することが求められる.本研究では,実河川中の砂州から採取した砂の中にあるMP量を調査し,河川内におけるMPの挙動と環境要因がその堆積に与える影響を考察した.その結果,水位や風速などの環境要因がMPの動態に大きく影響することが明らかとなった.大規模洪水後にはMPが低標高の地域に集中し,中小洪水では砂州前縁部に堆積が見られた.また,風が強い場合,MPの拡散範囲が広がる傾向があった.これらの結果は,河川におけるMPの挙動を理解し,効果的な回収策を検討する上で重要な知見を提供する.
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坂本 貴啓, 松本 遥紀, 鈴木 宏幸, 田中 孝幸
2025 年31 巻 p.
31-36
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
国土交通省は河川空間を活用して地域のにぎわいを創出するため,河口から水源地までの川で「かわまちづくり」を展開してきた.多くの地域に特色ある計画が策定されているが,地域の特色を差別化し,体系的に分類・比較することは行われていなかった.本研究では,264件のかわまちづくり計画を河川の物理環境特性に基づいて31タイプに分類し,特徴に見合った整備方法について考察した.河川物理環境分類については,①河川スケール(川幅)での分類,②河川縦断方向(セグメント)での分類,③河川横断方向(断面)の大きさに基づいて類型化を行い,ハード整備とソフト施策の例を整理した.結果として,24タイプの該当があった.大河川では高水敷中心の整備が行われ,中小河川では源流・河口域で親水整備が進められている.ソフト施策では,大河川ではレクリエーション活動が中心で,中小河川では教育や経済活動に注力されていることが確認された.以上のことより,河川物理環境特性別(川幅区分,断面区分,縦断区分)にかわまちづくり計画に特徴があることが示唆された.
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釣 健司, 村岡 敬子, 服部 啓太, 田中 孝幸
2025 年31 巻 p.
37-42
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
環境DNAメタバーコーディングは試料中に含まれる腐食物質等の様々な要因で生じるPCR阻害により,DNAの増幅が阻害され種が非検出となる場合や検出感度が低下する場合がある.環境DNA学会が発行する調査・実験マニュアルではPCR阻害の対策として,DNAの希釈による阻害物質濃度の低減,DNAの精製(阻害物質除去),阻害に強いPCR酵素(耐阻害酵素)への変更の3手法が記載されているが,これら3手法の阻害低減の効果や検出種及び検出種数の違いについて比較事例は限られている.本研究では河川でPCR阻害が確認された複数の調査地点を対象に,PCR阻害対策の手法比較を行った.その結果,いずれの手法もPCR阻害を低減できたが,抽出DNAの精製や対阻害酵素を用いた手法に比べ,希釈は相対リード数の少ない種の検出頻度が低下し,偽陰性を生じる可能性が高くなることが明らかになった.一方,精製は処理によるDNAの損失がみられ,耐阻害酵素では非特異的増幅が多い傾向がみられ,それぞれの手法,製品の特性をふまえ分析及びデータ解析を行う必要があると考えられる.
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宮脇 成生, 安田 悠乃, 江口 健斗, 萱場 祐一
2025 年31 巻 p.
43-48
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
河川植生を予測・評価するための試みとして,既往の植生図から「群落クラスタ」を構築し,河川物理環境特性との対応を解析した.ここでは,長良川の2地区において,対象範囲の4年代(2007,2012,2017,2022年)の植生図を5m×5m格子に区切り,階層的クラスタリングを行った.その結果,同じクラスタに分類された格子は空間的に集まって分布しており,出現する群落が異なる群落クラスタを構築することができた.群落クラスタの中には,河川に依存性の高い「氾濫原」の群落が主体のクラスタがあり,これは河川域における保全重要性の高いクラスタと位置づけられると考えた.また,各群落クラスタと河川物理環境特性の対応については,2007~2022年の最大相当流量(6000m3/s)に対する水深と摩擦速度について検討し,統計的に有意な関係が認められた.以上より,既往植生図から群落クラスタの構築が可能であること,河川特性との対応から各群落クラスタの予測の可能性が示された.さらに,群落クラスタと河川管理における保全重要性の位置づけが可能であることを示すなど,実務への実装の基礎となる知見が得られた.
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泉野 珠穂, 金尾 滋史, 瀧 健太郎
2025 年31 巻 p.
49-54
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
本研究では,滋賀県犬上川中下流域を対象に湧水域を主な生息地とする希少淡水魚ハリヨ(Gasterosteus aculeatus subsp.)の保全・再生手法を検討した.無人航空機(UAV)に搭載したマルチスペクトルセンサー ALTUM-PTで取得した月次熱赤外画像データと二次元不定流解析で得られた頻度別水理諸量(水深・流速など)を説明変数,ハリヨの生息データを被説明変数としてMaxent(Maximum entropy modelling)を用いて種分布モデルを構築し,湧水のあるO型の淵がハリヨの生息適地であることを示した.さらに,二次元河床変動解析により,湧水地点上流側に上向き水制を設置することで適地が形成され,適地推定モデルの予測では当該箇所でハリヨの生息確率が約20%上昇することを確認した.
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伊藤 岳, 内藤 太輔, 瀧 健太郎
2025 年31 巻 p.
55-60
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
本研究では,湧水河川である静岡県柿田川を対象に,希少水生植物であるミシマバイカモ(Ranunculus nipponicus var. japonicus)の生育ポテンシャルマップを試作した.このマップは,ミシマバイカモの在・不在データを応答変数,水深・流速・日射量を説明変数とした一般化線形モデルにより生育確率の空間分布を表現したものである.2024年度に柿田川自然再生事業の一環として実施されたミシマバイカモ再生試験において,作成したポテンシャルマップと特定外来生物オオカワヂシャ(Veronica anagallis-aquatica)の分布を重ね合わせ,4箇所の試験地を特定して移植実験をしたところ,移植後5ヶ月を経過した時点において,3箇所でミシマバイカモの活着が確認された.
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鬼束 幸樹, 渡邊 杏咲, 夕田 啓剛
2025 年31 巻 p.
61-66
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
現在,ニホンウナギは絶滅の危機にある.その一因にダムや堰等による河川縦断方向の移動阻害が挙げられる.対策として設置された国内の既設魚道の過半数は階段式である.階段式における魚の遡上経路は切り欠きと潜孔の2カ所だが,ニホンウナギの遡上経路は不明である.本研究では,潜孔および切り欠きを有する階段式魚道において流量を10.0~21.7 (l/s)の5通りに変化させ,ニホンウナギの遡上経路選択に及ぼす影響を分析した.その結果,流量に関わらず切り欠きよりも潜孔を通過して遡上に挑む個体数が多く,また,切り欠きよりも潜孔の遡上成功率の方が高かった.そのため,遡上したニホンウナギの9割以上は潜孔を通過していた.したがって,階段式魚道で同魚種を遡上させるには,潜孔の設置が必要である.
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中村 圭吾, 鈴木 敏弘, 宮川 幸雄
2025 年31 巻 p.
67-72
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
現在,直轄河川においては河川環境の定量目標が設定され,ネイチャーポジティブな川づくりが進めら れている.一方,気候変動による水害の激甚化への対応も求められており,河川改修の内容によっては河道内で必ずしもネイチャーポジティブが実現できない場合も想定される.その解決手段のひとつとして,あらかじめ別の場所で準備された生息場の権利を購入する「生物多様性クレジット」の導入が期待されている.本稿ではまず海外における生物多様性クレジットの現状を整理する.生物多様性クレジットは「オフセット」のほか,「貢献」「インセット」の三種に大別される.特に河川・湿地の「オフセット」が世界的に最も活用されているため,米国の「オフセット」を中心に,世界的な状況について述べる.最後に,これらの現状を踏まえ,生物多様性クレジットの日本の河川管理への活用可能性と課題を考察する.
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大貫 駿太, 今村 能之, 小西 徹, 天口 英雄
2025 年31 巻 p.
73-78
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
プラスチック利用による河川中のマイクロプラスチック汚染を包括的に定量評価する手法として,マテリアルフロー分析を用いたマイクロプラスチック河川流下モデルを開発し,荒川流域への適用を行った.マイクロプラスチック流下量について,荒川本川での推定値と観測値を比較したところ,概ね良好な結果を得ることができた.本研究で開発したマテリアルフロー分析及び河川への排出量推定は日本全国で適用でき,同様の排出分布及び流下量の推定手法を用いて各河川流域でのマイクロプラスチック流下量の推定が可能な新たなモデルを開発した.本モデルは,生産,加工,消費,廃棄,リサイクル,流出抑制の各プロセスでのプラスチック削減対策等の効果の定量的評価が可能な手法であると言える.
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宮園 誠二, 滝山 路人, 宮平 秀明, 中尾 遼平, 赤松 良久
2025 年31 巻 p.
79-84
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
河道内氾濫原は様々な生態的機能や高い魚類多様性を有することが報告されており,河川全体の魚類保全のために,河道内氾濫原の魚類相を広域的に把握し,保全・修復すべき氾濫原の優先順位付けを行う必要がある.本研究では,江の川土師ダム下流の河道内氾濫原を対象とし,環境DNA定量メタバーコーディングを用いて氾濫原プールの魚類群集構造を把握することを目的とした.解析の結果,対象調査地点において氾濫原プールと本流で魚類群集構造が顕著に異なることが明らかとなった.本流地点では,河川内の瀬や淵を生息場として利用する魚類の環境DNA濃度が相対的に高いのに対し,氾濫原地点では,ワンドや氾濫原など止水環境を好む魚類の環境DNA濃度が高いことが明らかとなった.さらに,環境要因と魚類多様性および各魚類の環境DNA濃度との間に顕著な相関がみられ,氾濫原内の環境や本流への連続性が河道内氾濫原の魚類群集構造に影響を与え得ることが示された.これらの結果から,環境DNA分析を用いて河道内氾濫原の魚類群集構造や生態的特性を把握可能になることが示された.
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周 月霞, 森田 悠生, 戸田 祐嗣
2025 年31 巻 p.
85-90
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
河川における樹林化問題が進行する中,治水安全度の確保・向上と河川生態系の保全を両立させる必要があり,そのために数十年規模の中長期スケールで河道地形・河川環境を予測・評価する技術の開発が求められている.本研究では,まず地形変動と陸域生物(植生)の生息場の変化を同時に予測できる「流れ・地形変動-植生動態-ハビタット評価」の総合解析モデルを構築した.そして,中長期ハビタットの動態を評価する指標として,地形変動・植生高変化の累積指標と,堆積⇔洗堀・裸地⇔植生の変化を表すシフティング指標を作成した.更に中長期解析における地形変動と植生動態を支配する洪水特性を把握し,長良川を対象としてモデルの適用性を検証した.その結果,河床変動と植生動態が概ね年最大洪水に依存することが明らかとなった.また,ハビタット評価結果と環境情報図を比較した結果から,本研究の総合解析モデルは河道の動的ハビタット環境をマクロな視点で評価する際に有効であることが示された.
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濱木 道大, 坂本 和弥, 森田 大詞, 宮崎 靖, 今野 義文, 上田 宏, 清水 康行
2025 年31 巻 p.
91-96
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
床止・魚道施設における魚類の遡上行動解析では,現地でのトラップ調査等の現地モニタリング調査が多く実施されている.一方で,数値解析により事前に魚類の遡上性能を実河川において評価・検討した事例は少ない.本研究では,魚類の遊泳・遡上行動の数値解析によるシミュレーション手法開発と,床止・魚道施設における遡上機能の評価手法開発を目的として,床止・魚道内における現地遡上調査を基に,数値解析(iRIC-GELATO)による遡上経路再現を試みた.対象魚はサケ科魚類(サケ)とし,遡上経路はバイオテレメトリー調査結果を基に設定した.検討の結果,河川流況を精度良く再現できる物理モデルと,最小限の遊泳条件を与えることで,遡上経路を概ね再現することができ,本手法が魚道の遡上性能を定量的に評価する手法として有効であることを証明した.
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酒井 大介, 荒川 貴都, 冨田 遼, 小林 雄介, 小川 絵莉子, 森 充弘
2025 年31 巻 p.
97-102
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
大規模な洪水の流量を得ることは,高水計画への活用や被災実態把握・対策検討等の観点から重要である.一級河川安倍川では令和4年9月台風第15号により,基準地点手越において氾濫危険水位を超過する大規模な洪水が発生したが,本洪水では,浮子流量観測は作業員の安全確保から中止した.このため,洪水時流況の動画から表面流速を得るSTIV法に加え準三次元流況解析を活用した再現検証により流量を推定した.再現検証は,実績降雨から貯留関数法により流量ハイドロを算定し,これを境界条件とした準三次元流況解析を用いて,手越地点の観測水位と右岸側のみで得られたSTIV法による観測表面流速を検証材料として行った.河床の粗度係数は,安倍川が網状の複雑な流況を呈する特性を踏まえ,局所的な水深に対応する河床波から推定される値を与えた.これらの試行の結果,観測水位と観測表面流速を再現するに至ったことから,本流況解析の与条件とした流量ハイドロは確からしいと判断された.本報告は,地形,雨量,水位,部分的な表面流速という限られた観測データから流量を推定する一手法を提示するものである.
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安田 吾郎, 白川 祐樹, 髙良 圭, 鴨志田 穂高, 清水 康行, 坂口 誠, 熊井 教寿
2025 年31 巻 p.
103-108
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
支川合流部に設置された水門を逆流防止のために閉扉する操作に際して,流向の判断が難しい場合があることが従来から課題とされていた.水門の遠隔・自動操作の必要が操作員の高齢化等に伴って増す中で,現場での臨場確認なしで流向を判断することはさらに難易度が高くなる.本研究においては,以上の課題に対応した解決策を求めるための最初のステップとして,支川合流部での流行が逆転する前後における流向・流速の数値シミュレーションを,筑後川の新桂川水門で実施した.その結果,水門断面における流れの不均一性が確認されるとともに,水門操作タイミングの判断に改善の余地があることが確認できた.このほか,GPS浮子による流向・流速の観測を行い,数値シミュレーション結果と類似した結果が得られた.
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佐藤 海輝, 後藤 岳久, 岡田 一平, 福岡 捷二
2025 年31 巻 p.
109-114
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
五十嵐川は平成16年と平成23年に大規模な洪水が発生し,内岸堤防の破堤・内岸高水敷の洗掘・堤防侵食等の河道被害が生じた.従来は河道の内岸側の被害はあまり着目されていなかったが,複断面的蛇行流れの発生により内岸流速が増大することが明らかになっている1).これにより,水位が上昇した洪水ピーク時には蛇行部内岸側のエネルギーが高まることが考えられる.大洪水が起きやすく,洪水被害が多い五十嵐川において,被害機構を明らかにすることは,今後の河川整備の観点から極めて重要である.
本論文では平成23年7月新潟・福島豪雨を対象に準三次元洪水流・河床変動解析を行い,平成16年洪水時と流れ場・河床変動場を比較することで河川改修の効果を踏まえて被害機構を明らかにする.また,解析で得られた流速や圧力から全エネルギー水頭を算出し,その場所の持つ全エネルギー水頭と被害の規模の関係性について検討する.
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松下 晃生, 吉武 央気, 南 まさし, 内田 龍彦, 松尾 大地, 坂野 アイカ, 松田 浩一
2025 年31 巻 p.
115-120
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
平面二次元以上の洪水流解析モデルを構築する際には,過去洪水で取得された痕跡水位や水位観測所で観測された時系列水位と計算水位の比較を行い,再現性を確認する.再現性向上を目的とした粗度係数や樹木群抵抗のパラメータ調整では,パラメータ同定に複数回の計算が必要な場合がある.また,河道の平面形状や構造物などを適切に評価するには平面二次元以上の洪水流解析モデルが必要と考えられるが,準二次元モデル等と比較して計算時間が増加するため,モデル構築までに労力と時間を要する.
以上を踏まえ,平面二次元以上の洪水流解析モデルの構築労力を低減することを目的として,粗度係数調整に平均成分加速法(以下ACA法)を適用した場合の粗度係数調整フローを整理し,ACA法が粗度係数の調整計算の効率化に寄与する効果を確認した.
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後藤 浩, 石野 和男
2025 年31 巻 p.
121-126
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
近年,地球規模の気候変動の影響を受けて,毎年のように各所で水害が起きている.しばしば,堰などの低落差の河川横断構造物の下流や河床勾配が限界勾配に近い中山間地の河川においては,波状跳水の形成が原因であろう波状水面を伴う流況が観察され,その影響による被害と推察される事象が散見される.このような洪水時の河川で波状跳水が原因である波状水面の形成は,河川の設計では考慮されていないため検討の余地があると考える.本研究では,動画にて記録された洪水時の貴重な映像を入手して現象の考察を行い,波状跳水由来と考えられる波状水面の形成を河川設計に役立てられるような提案を行った.
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飯村 耕介, 友野 直樹, 池田 裕一
2025 年31 巻 p.
127-132
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
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令和元年東日本台風により栃木県の中小河川の多くで決壊や氾濫が生じ,県管理河川の13河川27か所において決壊が発生し,32河川40か所で溢水・越水が発生している.蛇行の大きな中小河川においては,決壊により氾濫した流れが堤内地から河道側に戻る地点やその対岸の堤防で連鎖的な決壊が確認されており,流下した氾濫流が河道に戻る流れに着目し,氾濫原からの戻り流れの流量に応じて合流後の河道内流況にどのような影響を与えるか水理実験により明らかにした.氾濫原流量が増加し,全流量に対する氾濫原流量の割合が4割を超えると,氾濫原からの戻り流れの方向が対岸側を向くようになり,戻り流れの流速が大きくなり,その影響が対岸側にもおよぶことを確認した.また高流速域においては水面勾配も大きく,流速の鉛直方向の変化では,特に水面付近に高速流が見られることが分かった.
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田端 幸輔, 松井 大生, 小橋 力也, 瀬﨑 智之
2025 年31 巻 p.
133-138
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
平面二次元(2D)や準三次元(Q3D)モデルは,河道計画・設計での意思決定支援の有力なツールとなり得るが,現状は基準類が整備されておらず,目的に適した条件設定や結果評価が十分でない事例も散見され,技術開発ニーズも共有されにくい状況にある.このような状況の改善には,数値解析結果の品質向上,技術開発ニーズ共有,学との連携によるモデル改良・実装の好循環を促進する基盤整備が必要と考えられる.本報告は,上記基盤整備を目指して取り組んだ内容と結果を示すものである.
直轄河川の実態調査,技術者との意見交換及びヒアリングを実施した上で,基盤整備の概念を提示し,その一環として数値解析適用手法に関する技術資料案を建設コンサルタント技術者と連携し作成した.
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三輪 浩, 難波 媛香, 和田 孝志, 梶川 勇樹
2025 年31 巻 p.
139-144
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
我が国には多数の堰が設置されている水系が多く,比較的短い間隔で連続している例も少なくない.近年,これらは必要に応じて統廃合が進められている.堰を撤去する際には撤去後の河床変動について検討する必要があるが,とくに連続した堰の撤去では撤去方法の影響についても留意が必要である.すなわち,一定規模の出水期間内に撤去する同時撤去と一定規模の出水を経験した後に撤去する個別撤去である.堰撤去の影響を検討することで,より合理的な河道管理を行うための情報が期待できる.そこで,本研究では連続する堰の撤去法が河床変動に及ぼす影響について水路実験によって検討し,数値計算によりその再現性を確認した.その結果,堰の撤去方法によってその影響範囲が異なること,とくに堰間の河床変動は堰撤去方法によって影響を受けやすいことが示された.また,数値計算により種々の条件下での堰撤去の 影響を検討できる可能性が示された.
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西 広樹, 小林 草平, 角 哲也
2025 年31 巻 p.
145-150
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
ダム貯水池における堆砂はダムの長寿命化の実現に向けた課題である.一方で,ダムによって土砂が捕捉されることで,ダム下流の河川では河床低下や河床の粗粒化等の問題が発生している.これらを解決するためには,ダム堆砂を環境資源として捉え,土砂供給を行うことによる流砂環境の再生が必要である.しかしながら,流域内には,砂防,ダム,河川,海岸,環境,さらには利水者や港湾管理者など,さまざまな関係者がそれぞれプラス,マイナスの意見を有しており,これらをどう調和的に進めるかが課題となっている.本稿は,淀川水系を対象に,宇治川天ケ瀬ダムから土砂還元(置土)を行う場合の制約条件及び期待される効果について,下流河川における河床変動高及び河床材料の変化の観点から整理して,これらをもとに「適切な土砂還元のあり方を検討する手法(連立不等式の考え方)」を提案した.この考え方は,多くの利害調整を必要とする総合土砂管理の進め方に対して大きな示唆を与えるものと考えられる.
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新妻 友太, 南 まさし, 片山 直哉, 吉武 央気, 長浜 和宏, 池田 啓彰, 島田 立季, 水田 圭亮
2025 年31 巻 p.
151-156
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
本研究では,河床低下・粗粒化・二極化が進行したダム下流河川に対する土砂還元を想定し,河道管理の中で行われる砂州波高の切り下げが還元土砂の堆積特性へ与える影響を把握することを目的とした水理模型実験を実施した.実験では,浮遊砂形態での輸送が主体と考えられる微細砂の影響に着目し,砂州波高が異なる2ケースの固定床化した交互砂州を対象とした.これに平均年最大流量相当をピークとする減水期を対象とした流量と微細砂を供給し,その時間的・空間的堆積特性を評価した.実験の結果,砂州波高を切り下げると,河道全体としての微細砂の捕捉率向上が見られ,河床低下・粗粒化対策としての有用性が確認された.一方で,再二極化に与える影響については,砂州では増水期における堆積を促進し,再二極化を進行させる方向に作用した.澪筋では減水期における流出が抑制されるため,再二極化を抑制する方向に作用した.二極化解消を目的とした微細砂還元を行う際には,微細砂が砂州上で輸送されない程度の流量条件を狙って検討することが望ましいと考えられる.
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阪上 健, 内田 龍彦, 松尾 大地, 吉武 央気, 坂野 アイカ, 溝口 敦子, 酒井 大介
2025 年31 巻 p.
157-162
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
安倍川では令和5年に発生した規模の小さい出水(R5洪水)により左岸17.5km付近において護岸被災が確認された.ここでは,前年に発生したピーク流量がより大きい洪水(R4洪水)では被災していない.そこで,本研究ではR4およびR5洪水の洪水流・河床変動解析を行い,R4よりも小さいピーク流量のR5洪水の危険度を予見できたのかについて検討した.初期地形に対しては,ALB地形データとLP地形データ(水みちなし)を用いた場合の比較を行い,低水路地形が計算結果に与える影響についても調べた.護岸危険度評価には,河床変動量と,河岸際での乱れエネルギー分布を用いて検討した.R5洪水では,被害箇所の上下流で長い区間左岸際に洗掘が発達し,乱れエネルギーの平方根(乱れ強度)は,被害箇所でR4洪水よりR5洪水の方が大きくなる結果が得られた.その要因としてR4からR5にかけて流路が側方に移動したこと,洪水時ピーク流量はR4洪水の方が大きいが,累積流量はR5流量の方が大きいことが考えられる.また,ALB,LP初期地形の比較からR5洪水前の水路も侵食危険度を高くしていることも明らかにした.
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竹崎 奏詠, 髙田 翔也, 水草 浩一
2025 年31 巻 p.
163-168
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
海外の既存ダムの気候変動への対応として近年採用実績が増加しているPKW(Piano Key Weirs)は,越流頂の平面線形が上下流方向に張り出した構造となっており,河川横断方向の単位幅当たりの越流頂長を長くすることができるため,標準越流頂に比べ放流能力の著しい向上が期待されている.本総説では,PKWの国内ダム等への適用を念頭に,1. 海外にて個々に実施されたPKWの流況・放流特性の分析,2. 流量係数や放流能力に及ぼすPKWの各種構造パラメータ等の影響分析,3. 代表的なPKWの流量係数の推定式の推定精度を整理し,現時点の机上設計において,より適用性が高いと考えられる流量係数の推定式を,流量係数に大きく影響するL/W,H/Pの範囲毎に提示した.更に,PKWの国内適用の観点から留意するべき事項(今後の課題)を整理した.
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山路 昭彦, 道広 有理, 木谷 和大
2025 年31 巻 p.
169-174
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
国内の主要ダム流域を対象として14日先までの長時間アンサンブル降雨予測の予測時間帯別の精度について評価を行った.相関係数でみると2日先で0.79~0.89,8日先で0.42~0.64,14日先で0.09~0.30と単調に低下しており,この傾向は地域によらず類似していた.RMSEは各ダム流域とも10日先までは単調に増加し,それ以降は14日先にかけて頭打ちとなり,その値は東日本で小さく西日本で大きくなる傾向がみられた.全てのダムの相関係数が0.4を超えるのは8日先までであり,情報提供までの時間差を考慮した実質7日先までが定量的に利用する目安となると考えられる.一方,事前放流ガイドラインで利用が推奨される気象庁ガイダンス降雨予測との比較では,長時間アンサンブルと気象庁ガイダンスの予測精度はほぼ同等であり,長時間アンサンブルの予測精度は直近でも十分に確保されていることが確認できた.
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橋口 茂, 岩永 正幸, 髙野 伸介, 山田 裕志, 井手野 宏明, 多田 彰秀
2025 年31 巻 p.
175-180
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
浦上ダム再生において進めている貯水池掘削について,現地での制約条件と課題および技術的特徴を示すとともに,現時点における工事の実施状況を紹介し,考察を試みた.約50万m3の必要掘削量を確実かつ継続的に掘削する目標に向けた課題としては,必要掘削量に応じた掘削形状の設定,貯水位を維持した状態での水中掘削や水質への影響軽減を図る工法の選定,効率的な掘削土の改良等が可能な仮設ヤード設置が求められ,これらの課題に対応した貯水池掘削の技術的特徴を報告した.併せて,近接する住宅地にも配慮しつつ進めている仮設ヤードの整備状況等についても報告した.得られた成果として,浦上ダム再生における貯水池掘削については,貯水池の利水機能を維持した条件下で工事を実施していく目途が立ち,気候変動への適応に向けて,各地のダム再生を推進する一助になればと考えている.
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岩本 麻紀, 猪股 広典
2025 年31 巻 p.
181-186
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
ダムの堆砂対策の一つである土砂バイパストンネルでは,土砂が高速でトンネル内を流下することによる水路インバートコンクリートの損傷が課題となっている.本論文では,土砂バイパストンネル内の流況・土砂流下の特徴把握及び損傷抑制に寄与する水路形状設計のための基礎検討として,水理実験と数値計算を実施した.水理実験では,水路幅と水深の比(アスペクト比)によって流下する土砂量の横断分布が異なることを確認した.また,数値計算では,水路実験の再現計算により,乱流モデルについて検証するとともに,損傷軽減に資する水路形状について検討した.
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小林 薫, 井上 恵天, 高橋 和真, 辻 勲平, 根本 嵩也, 松元 和伸
2025 年31 巻 p.
187-192
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
記録的短時間大雨に伴う堤防決壊が頻発化する近年,粘り強い河川堤防が求められている.筆者らは,河川堤防裏法面浅層部に敷設した破砕貝殻をネットに詰めた透水性表面被覆工の越水時侵食抑制効果をフィールド実験(堤高2 mの裏法面を想定した傾斜水路(勾配 1:2)による越流実験)により検証した.一方で,傾斜水路を用いた実験であるため,透水性表面被覆工下に位置する堤体の安定性(パイピングや吸出しなど)に関しては検証されていない.以上より,表面被覆工による侵食防止・抑制対策の課題の1つとして,越流時において発生する可能性がある表面被覆工下のパイピングや吸出しによる堤体の安定性検討が必要である.本研究は,透水性表面被覆工を設置した堤体裏法面に対し,多孔質層内外の流れを統一的に表現可能な粒子法SPHによる解析手法を適用し,表面被覆工の設置方法や透水性の異なる場合における越流時の流速および水圧分布を基に,吸出し等に対する堤体の安定性を数値解析的に明らかにした.
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後藤 岳久, 福岡 捷二
2025 年31 巻 p.
193-198
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
本研究では,堤防裏法部に連接ブロックと吸出し防止シートを設置する表面被覆型対策工周辺の越流時の流れと,それに伴う堤体侵食を解析している.解析では,連接ブロックより上層の流れを解析する空気混入の影響を考慮した非静水圧準三次元解析法(Q3D-FEBS)と,連接ブロックの隙間と吸出し防止シート内部,その下の流れを解析する各材料の不透過領域の占有率を考慮した多層流モデルを組み合わせ,吸出し防止シート下の堤体表面の流れを解析し,それに応じた堤体侵食を評価できる解析法を構築した.解析法は,国総研で実施された堤体表面に初期侵食がある場合と無い場合の堤防越流侵食実験に適用され,初期侵食が堤体侵食に及ぼす影響について検討した.
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荒川 貴都, 酒井 大介, 冨田 遼, 小林 雄介, 小川 絵莉子, 森 充弘
2025 年31 巻 p.
199-204
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
安倍川は日本屈指の急流河川であり,大きな河床変動と澪筋の変動に伴う偏流が,河床洗掘や河岸侵食被害を助長しているため,対策工として多くの護岸や水制工等の整備を推進してきた.平成28年度には新たな対策工として,急流河川において特に平均年最大流量程度の中小洪水に有効とされる巨石付き盛土砂州の整備に着手した.右岸8.5k,左岸8kにて先端部の試験施工を実施した結果,令和元年までに生起した洪水に対し,澪筋を河岸から離し河道中央へ誘導する効果が確認された.その後,令和3年度に巨石付き盛土砂州右岸8.5kの中央部を整備し,令和4年9月台風第15号による氾濫危険水位を超過した大規模洪水に対しても河岸防護効果を発揮した.本稿では,これまでの継続的なモニタリングから,安倍川では巨石付き盛土砂州が幅広い洪水規模に対して治水効果を発現する工法となり得ることを報告する.
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諏訪 義雄
2025 年31 巻 p.
205-210
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
河川技術論文集第30巻において,著者は,現在の河川堤防浸透技術において研鑽すべき課題の一つとして,現地で起きた破堤現象の説明力不足,特に1976安八破堤現象を説明できない点を指摘した.本報告は,1976安八破堤について,水防当事者である安八町がまとめた「9.12豪雨災害誌」から,現場で起きた変状の推移を読み取り,堤防浸透破壊外力である外水位と降雨量を見つつその内容を整理した.併せて,破堤現象の説明力を高める上で着目すべきポイント,安八町区間の堤防強化経緯について考察した.本報告内容は,安八破堤の現象理解とメカニズム説明力を高める技術開発・検討において,考慮すべき要因・項目の設定,再現性の確認に活用できる.今後の河川堤防浸透技術向上が期待される.
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三好 朋宏, 河野 努, 松尾 峰樹, 福岡 千陽, 瀬﨑 智之
2025 年31 巻 p.
211-216
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
越水に対して粘り強い河川堤防の構造は,丁寧に作られた新品の状態での水理実験等でその性能を確認しているが,土堤や部材の形状・品質の経年的な変化,施工時に生じる軽微な誤差や不備等の事象が生じた状態でも,性能を発揮する信頼性を有することが望ましい.本論文では,FMEAやFTAの考え方を参考に,現地で起こりうる粘り強い河川堤防の故障を事前にかつ効率的に抽出し,その原因を明らかにする方法について検討し,3つの粘り強い河川堤防構造に適用した.その結果,新たな潜在的リスクを発見でき,効率的に信頼性の向上が図れることを示した.
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島田 友典, 神原 柚乃, 前田 俊一, 堀田 伸之, 三浦 剛志, 亀井 尚
2025 年31 巻 p.
217-222
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
河川堤防整備が進んでいる今日でも破堤などの大規模水害のリスクは依然として高く,例えば2016年8月の北海道豪雨では複数箇所で破堤が発生した.このうち常呂川直轄区間では7箇所で越水が確認されたが破堤に至ったのは1箇所であった.これについて堤防調査委員会では堤体材料の違い(砂礫土・粘性土)が要因の一つとしているものの,破堤現象に及ぼす影響は明らかではない.本報告では被害軽減技術を検討する際に重要な知見となる堤体材料の構成が破堤現象に与える影響を明らかにすることを目的に,実物大規模の千代田実験水路を用いて細粒分を多く含む堤体材料を使用した越水破堤実験を実施し,破堤口拡幅初期までの進行過程の整理を行った.これより細粒分を多く含む堤体は裸堤にも関わらず越水に対して一定の耐力を示すものの,基盤が洗掘されると破堤現象が急速に進行することが確認された.
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河野 努, 三好 朋宏, 福岡 千陽, 松尾 峰樹, 瀬﨑 智之
2025 年31 巻 p.
223-228
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
越水に対して粘り強い河川堤防は,水理実験等で性能確認を行い研究開発が進められているが,経年的な変状や施工時の不備といった不確実性事象が生じた状況下でも,一定の確からしさをもって越水性能を発揮できる信頼性を有することが望ましい.本稿では,溶接金網を用いたかご工を対象に,机上でFT図に整理した越水性能が損なわれるまでの変状進行シナリオを,実大堤防模型実験によって検証した.さらに,その結果を基にFT図を更新することによる,改善サイクルを試行した結果について報告する.
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近藤 知輝, 前田 健一
2025 年31 巻 p.
229-234
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
河川堤防の強化方法の1つに矢板での川表遮水工法による対策が挙げられるが,施工後も噴砂被害が報告されるなど,現状その効果については不明な点が多い.そこで,本研究では適切に矢板の効果が発揮される条件を明らかにするために,矢板の打設位置と長さの二つの条件を変化させた模型実験と浸透流解析を実施した.その結果,模型実験および実験の再現解析より,裏法尻で発生した噴砂により堤体下地盤に圧力が伝播し,それに伴いパイピングが進展することが分かった.そのため,堤内側に十分な長さの矢板を打設することで,噴砂による圧力伝播を抑制し,堤体下の土粒子流出やパイピング進展を抑制することが期待できる.また実スケールの浸透流解析より,矢板の条件に依らず,堤内地では圧力が伝播し噴砂が発生することが示唆されたが,矢板によりパイピング破壊に至る時間を遅延する効果が明らかになった.
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前田 拓人, 牧川 星朗, 音田 慎一郎, 肥後 陽介
2025 年31 巻 p.
235-240
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
河川堤防の決壊により引き起こされる甚大な被害を軽減するために,河川土工マニュアルでは堤体材料の粒度分布と締固め度に適性範囲が定められている.堤体材料によって侵食特性は異なるため,適性範囲内での堤体材料の違いが決壊プロセスに及ぼす影響を把握することは不可欠である.一方,耐侵食性を評価する際に引張破壊応力が用いられることがあるが,堤防の侵食特性と引張破壊応力の関係について十分な知見が得られていない.本研究では,粒度分布,締固め度が異なる堤体土を用い,堤防の越流侵食に関する水理模型実験,および引張破壊試験を実施した.その結果,細粒分含有率,および締固め度の上昇が耐侵食性を向上させることを示した.また,引張破壊応力を求め,実験結果と比較することで,締固め度90~95%の範囲では堤防の耐侵食性の評価と引張破壊応力に相関があることを示した.
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白石 芳樹, 竹村 吉晴, 後藤 岳久, 福岡 捷二
2025 年31 巻 p.
241-246
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
不飽和層を有する堤防への降雨の浸透は,降雨強度や降雨分布によって堤体内部の水分分布が影響を受ける.堤防に降った雨と堤防からの流出量と堤体内の飽和度等の計測値の時間変化が観測できれば,不飽和流れの水理解析法を用いることで,降った雨がいつ,どこに,どのような量が存在しているかを示す水収支分布が得られ,降雨の浸透や堤体内部の水分分布の推定が可能と考える.本研究では,模型大型堤防を用いた降雨実験結果をもとに,境界適合型水理解析モデルを開発し,水収支分布を再現することで堤体内の水の貯留及び流出過程を検証し,今後の堤体における水収支解析の有効性を示した.その結果,新たな指標Rimax,hmc,hcmaxを実験結果の水収支分布図を再現するように設定し,解析の流出量と堤体内の水分分布が実験値と同様の傾向を示し,他の降雨実験でも概ね再現できることがわかった.
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大本 照憲, 張 浩, 石井 悠大, 三宅 利
2025 年31 巻 p.
247-252
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
橋脚の局所洗掘は,主因として鈍い物体形状を有するために流下方向に強い圧力勾配が生じ,橋脚基礎には強い下降流を伴う馬蹄形の3次元的剥離渦が挙げられる.橋脚の洗掘対策は現在でも課題が多く残されている.本研究では,橋脚の直上流に流速低減および流向制御の機能が期待できる没水型ベーン工を設置することで馬蹄形渦の制御および橋脚の洗掘孔を抑制することが出来ることを実験的に検討した.得られた結果から,流下方向に漸縮した一対のベーン工は逆回転となる一対の縦渦を発生させ,ベーン間で上昇流を発生させ,無補強では洗掘孔近傍で下降流であった流速場が没水型ベーン工の設置によりベーン間で強い上昇流と橋脚直上流の接近流速を減速させた.また,ベーン工ペア数6のケースは,ペア数2のケースに較べて接近流速を抑制し,流向制御機能の大きいことが認められた.
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石井 秀憲, 小野 桂寿, 原田 大輔
2025 年31 巻 p.
253-258
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
本研究では,鉄道橋りょうが架かる実河川断面を対象に,河道特性を示す指標と側方侵食の関連性を分析した.分析の結果,複列砂州が発達していてB/hが大きい河道,過去に複列砂州だった河川の川幅が縮小した河道,比高の高い砂州が発達している河道で側方侵食が発生していることを示した.統計的手法による検討から,B/hとB/Baを用いて側方侵食の発生危険度を評価する方法を構築した.本手法は,簡易に算出できる指標を用いて,側方侵食の危険度を評価できる可能性があり,鉄道の河川橋りょうを管理する上で有益であると考えられる.
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渡邊 康玄, 北川 晶登, 白井 秀和
2025 年31 巻 p.
259-264
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
近年の豪雨災害で数多く生じている橋脚の沈下の原因の一つと考えられる橋脚底部の洗掘に着目し,フーチングを有する橋脚底部の洗掘機構を明らかにすることを目的として,2017年8月出水で橋脚のフーチング底部における洗掘によって沈下したと考えられている湧別川に架かるいわね大橋の1/120のスケールを基準として作成した模型を使用して,橋脚下部の浸食実験を行った.フーチング前面の洗掘深は,橋脚本体上流端とフーチングの上流端とのずれの大きさである出幅が大きくなるほど深くなる傾向を示しており,出幅が橋脚底面の洗掘現象に与える影響が大きいことを明らかにした.また,底面の洗掘が加わることによって流れ構造が変化し,それに伴い洗掘現象についてもこれまで実施されてきている橋脚周辺の局所洗掘に関する実験とは異なることを示唆した.
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大石 哲也, 今村 雄一, 山中 直樹, 布川 雅典, 井部 巧実, 今村 仁紀
2025 年31 巻 p.
265-270
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
本研究は,ハリエンジュの根萌芽抑制の効果的な管理を目指し,美瑛川河川敷において異なる5種類の工法により比較検討した.その結果,伐採・除根や表土剥ぎ取りでは,根萌芽により立木の生育箇所が2~3倍に増加した.一方で,形成層への物理的損傷を目的とした転圧処理では根萌芽が大幅に減少した.特に表土を10cm厚に平に均して転圧した試験区では,萌芽が完全に抑制された.転圧を用いる工法は,伐採・除根の工法に対し1.1~2倍の整備費であった.試験結果から,転圧工法はハリエンジュの根の再萌芽を抑制することが分かった.また,本工法の適用にあたっては,適切な条件下であれば持続可能な管理手法として有望であることが示唆された.ただし,立地特性によっては安易な伐採が却って拡大を促進する可能性があるため,適用条件の検討が今後の課題である.
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末永 遼, 鈴木 克尚, 出口 恭, 天野 邦彦
2025 年31 巻 p.
271-276
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
従来の現場計測による樹木群の胸高直径や枝下高,立木密度等の計測に替わり,UAVレーザ計測による 樹木群形状の高密度な三次元点群データを用いて樹木群の流水への影響を評価する手法について検討した.樹木群領域の三次元点群を河道縦断方向一定幅にスライスした河道横断面上へ投影し,樹木群の投影面積率鉛直分布を定量的に評価できることを示した.投影面積率の鉛直方向の変化傾向から,樹木群の平均的な枝下高標高および樹高標高を評価し得ると考えられた.また,河床面から任意標高までの累積投影面積率の鉛直分布より,河川水位が当該任意標高に達した際の単位体積中の樹木総投影面積の鉛直分布を求めることが可能であり,これにより河川水位に応じた樹木群投影面積の鉛直構造を反映した樹木群粗度係数を算定できることを示した.本研究の方法を用いることで,準二次元不等流計算による樹木群を考慮した流下能力評価において,樹木群の実際の鉛直構造を反映した流水抵抗の評価が可能になると考えられる.
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後藤 勝洋, 今村 正史, 片渕 公淑, 福岡 捷二
2025 年31 巻 p.
277-282
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
フリー
六角川中下流部は感潮河川であり,高水敷に繁茂したヨシが洪水流の大きな抵抗となるため,河道の流下能力が不足し水位上昇に伴う内水氾濫が課題となっている.高水敷に湛水池を設置することで,ヨシの繁茂を抑制し洪水水位を下げる対策が検討されている.本研究は,令和3年8月六角川洪水を対象に洪水流解析を行い,湛水池群による洪水水位低減効果を評価した.湛水池の機能は,高水敷の流量を増加させヨシの倒伏を促すことにより,低水路と高水敷の流量配分を変え,河道全体で洪水流を流れ易くすることにある.六角川中流部の湛水池の水位低減効果は,水面幅全体で受け持つため,令和3年8月洪水に対して-5~-15cm程度であるが,その効果は湛水池の設置されていない区間を含む広範囲に及ぶ.これらの効果は高水敷が冠水する流量で機能し始め,湛水池の流れが発達する増水期に卓越すること,これにより計画高水位を超過する時間を0.5~2時間程度短縮させることになる.さらに,湛水池は維持管理に優れ,新たなワンド環境の創出効果と合わせて,ヨシが繁茂する低平地河川の治水と環境の調和にも寄与している.
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久澄 伸太郎, 田中 規夫, 五十嵐 善哉, 八條 陸, 中山 尚, 松本 敬之, 坂本 雄司
2025 年31 巻 p.
283-288
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/30
ジャーナル
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洪水への治水対策として流下能力向上のために樹木伐採等が実施されているが,河川環境多様性のためには河道内植生との調和も重要である.本研究では,横断方向に切り下げられた高水敷を含む複断面水路模型を用いた水理実験において,高水敷水深・低水路水深比(h/H)や植生模型高さを変化させ,流況(大規模水平渦の発生有無など)と土砂堆積量の関係を解明することを試みた.既往研究との比較から,低水路際に植生がある場合は,より小さなh/Hで大規模水平渦が発生することが示された.h/Hが0.18と小さく,大規模水平渦が発生するときは,植生域の流下方向長さが短く水平渦が十分に発達しない程度であることが土砂堆積抑制に重要である.
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