2025 年 31 巻 p. 67-72
現在,直轄河川においては河川環境の定量目標が設定され,ネイチャーポジティブな川づくりが進めら れている.一方,気候変動による水害の激甚化への対応も求められており,河川改修の内容によっては河道内で必ずしもネイチャーポジティブが実現できない場合も想定される.その解決手段のひとつとして,あらかじめ別の場所で準備された生息場の権利を購入する「生物多様性クレジット」の導入が期待されている.本稿ではまず海外における生物多様性クレジットの現状を整理する.生物多様性クレジットは「オフセット」のほか,「貢献」「インセット」の三種に大別される.特に河川・湿地の「オフセット」が世界的に最も活用されているため,米国の「オフセット」を中心に,世界的な状況について述べる.最後に,これらの現状を踏まえ,生物多様性クレジットの日本の河川管理への活用可能性と課題を考察する.