2025 年 31 巻 p. 61-66
現在,ニホンウナギは絶滅の危機にある.その一因にダムや堰等による河川縦断方向の移動阻害が挙げられる.対策として設置された国内の既設魚道の過半数は階段式である.階段式における魚の遡上経路は切り欠きと潜孔の2カ所だが,ニホンウナギの遡上経路は不明である.本研究では,潜孔および切り欠きを有する階段式魚道において流量を10.0~21.7 (l/s)の5通りに変化させ,ニホンウナギの遡上経路選択に及ぼす影響を分析した.その結果,流量に関わらず切り欠きよりも潜孔を通過して遡上に挑む個体数が多く,また,切り欠きよりも潜孔の遡上成功率の方が高かった.そのため,遡上したニホンウナギの9割以上は潜孔を通過していた.したがって,階段式魚道で同魚種を遡上させるには,潜孔の設置が必要である.