2026 年 32 巻 p. 121-126
生物の生息・分布情報は,生息域における生物多様性の基盤となる情報であり,生態系の変化や回復過程,健全性の評価において重要となる.水生昆虫類は河川環境の変化や人為的な影響に敏感であることから,重要な指標種のひとつとなることが知られる.本研究では,水生昆虫類の多様性評価における環境DNA 分析の基礎的検討を目的として,中国地方の一級水系4 河川を対象とした環境DNA 調査および河川水辺の国勢調査 (水国調査)の過去記録との比較を行った.本研究では,28 地点67 サンプルから環境DNA分析・水国調査あわせて7 目65 科324 種群の水生昆虫類が確認された.環境DNA 分析の特徴として,ハエ目(特にユスリカ科)およびトビケラ目の検出率が水国調査に比べて低かったが,カゲロウ目,トンボ目は水国調査よりも検出種数が多くなっていた.本研究の結果から,河川の水生昆虫類のモニタリングにおける環境DNA 分析の有効性を示せた一方で,今後の技術的な改善を要する分類群も含まれていた.