2026 年 32 巻 p. 355-360
河川堤防のパイピング照査は,漏水・噴砂の発生予測を主眼としており,発生後の損傷進展に対する水防工法の効果は十分に解明されていない.そこで本研究では,水防工法の役割を漏水停止ではなくパイピング損傷進展の制御として再定義し,模型実験,Sellmeijerモデルに基づく再現解析,および実堤防解析により,その力学的メカニズムと適用条件を検討した.その結果,水防工内に水位を確保することにより,裏法尻の局所動水勾配を緩和し,進行性噴砂を土粒子の流出を伴わない漏水へ移行させ,パイピング進展を抑制できることを示した.一方で,不適切な条件や早期の対策によっては,周辺地盤に揚圧力が伝播し,新たな噴砂を誘発して損傷進展を助長することが示された.以上より,水防工法が安全かつ効果的に機能する条件を明らかにし,地盤条件や施工タイミングに基づく新たな水防工法の運用指標を提案した.