防災教育学研究
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大地震直後に火災、爆発、酸欠、中毒事故が起こり得る 大学の理系建物への再入棟行動を防止するための漫画教材の開発
小柴 佑介中山 穣
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2022 年 3 巻 1 号 p. 107-118

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抄録

試薬、溶剤、ガスなどのフィジカルハザードを保管、取り扱う理系の大学建物においては、大 地震後に火災、爆発、中毒、窒息事故が発生し得る。従って、大地震直後にそういった大学建物 に安易に再入棟することは不安全行動であり、これを防止することは大学防災にとって重要であ る。漫画には数多くの利点があることが報告されている。そこで、大地震直後において、フィジ カルハザードが保管されている大学建物へ学生が戻ることを防止するために、大地震時の再入棟 行動をテーマとした漫画教材を開発することを目的とした。本研究では、主として筆者らの先行 研究の知見に基づき、フィジカルハザードが保管されている実験室における火災・爆発事故およ び中毒・酸欠事故に係る 2 つの漫画教材を制作した。火災・爆発事故に係る漫画教材では、主 人公が溶剤による火災および水素爆発を、中毒・酸欠事故に係る漫画教材では主人公が塩素ガス にばく露されるシナリオとした。各漫画教材において、前半は不安全行動である再入棟行動を選 好することで主人公が死亡するストーリーで、後半は再入棟行動のリスクおよび再入棟を取らな いためのポイントを示すという構成とした。本研究で開発した漫画教材は、大地震直後における 人的損失の低減に資すると考えられる。

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