抄録
本論文は、長期化するコロナ禍において、「音楽は不要不急の存在」との世論から活動に大きな
制約を受け続けた成田ジュニアストリングオーケストラの高校生コンサートマスターが、自らの
演奏活動により地域の災害医療や防災教育・啓発が抱える課題解決に挑んだ探究活動の実践報告
である。地域災害医療サイクルの予兆期、慢性期、静穏期に対して地域のアマチュア音楽家が貢
献できることを考え、ジュニアオーケストラの仲間と地域探究チームを立ち上げて「演奏を通じ
た防災意識の啓発(予兆期)」、「被災地での慰問演奏(慢性期)」、「アイヌ民族音楽による自然災
害の伝承方法を取り入れた新たな防災音楽てんでんこの開発(静穏期)」に取り組んだ。被災地に
おける災害記憶や防災危機意識の伝承、音楽による被災者の癒しへの貢献など、地域防災や災害
医療で課題とされていることについて、高校生音楽家が自らの演奏活動により解決しようと活動
したものである。