本稿ではeラーニングモジュールを通じて,日本人大学一年生の聞き取りスキルを発達させる可能性について考察する。日本の大学の枠組みや教材は学生のリスニング能力の向上を可能にするだろうか。年間45時間というコミュニケーションクラスで,演習のための限られた時間を削らずに,どのようにこの技能に必要なsavoir-faireやsavoir-êtreを培う支援ができるのだろうか。
これらの疑問への回答を試みるために,第1章では言語教育における口頭理解能力の扱い方についての理論に着目し,第2章で日本の大学における言語教育の背景について検討する。第3章ではモジュールの実現について詳説する前に,授業と相補するeラーニングモジュールを構築するために適用した方法論について述べる。評価プロトコルと結果の提示後、この教育ツールを提供するクラスと提供しないクラスの比較分析により,モジュールを実施する場合においてその有効性が継時的に確認されることが明らかになった。