抄録
本論文は、第一段階(幼稚園・小学校)の外国語を母語とする児童受け入れ施設に通う、フランスに移住したばかりの子供たちの、フランス語教育・習得における『ヨーロッパ言語共通参照枠』の文脈化の例を分析したものである。この外国人児童向けのフランス語教育の背景には、いくつか教育面での特性がある。それは、フランス語が、コミュニケーションのための言語、フランス語の授業で使用される言語、学校教育に使用される言語という3つの役割を同時に果たす言語として教えられているということである。本論文中では、まずフランスに移住したばかりの児童のフランス語教育というコンテクストのさまざまな要素を確認し、そうした子供たちの言語能力発達におけるヨーロッパ言語共通参照枠の寄与、および、フランス語が学校の授業に使用される言語となった途端に生じるその応用の限界を挙げる。フランス語を話さない児童のフランス語教育・習得というコンテクストの中でヨーロッパ言語共通参照枠が応用可能かどうかは、こうした子供たちが学校教育で使用されるフランス語で習得せねばならない知識と能力の観点から取り上げられる。