抄録
野球の打者は,投球されたボール情報のみでなく,投手の投球動作情報も利用して打撃を行う.そこで,投手による投球動作中の踏込み脚上下動作時間の使い分けが,打者のタイミングコントロールに与える影響を検討した.被検者は大学野球選手10 名とした.実験課題は,投手の投球映像を被検者に呈示し,ボールが到達すると予測したタイミングでスイングさせる打撃模擬課題とした.呈示映像は,投球動作局面を踏込み脚上昇局面と踏込み脚下降局面の2 つに分け,通常投球(上昇局面約1000ms,下降局面約800ms),上昇局面の動作時間を500ms 程度と1500ms 程度にしたもの,下降局面の動作時間を400ms 程度と1200ms 程度にしたものの5 種類を作成した.課題はこれらの映像を別々で連続呈示する単一条件とランダムに連続呈示するランダム条件で行った.結果として,タイミング誤差と打者のステップ動作のばらつきが,単一条件よりもランダム条件で有意に大きくなった(p< .05).よって,投手は単に踏込み脚の上下動作時間を使い分けるという比較的容易な方法で,打者のタイミングを混乱させることが可能であることが示唆された.