スポーツパフォーマンス研究
Online ISSN : 2187-1787
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  • 田方 慎哉, 青柳 領, 小牟礼 育夫, 金田 詳徳
    2025 年 17 巻 p. 119-130
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,W リーグにおける1 シーズン中での各チームが持つ「固有な戦術スタイル」と「対戦相手の特徴に応じて戦術を変える可変性」について,スタッツを用いて統計学的に検討した.対象は,2022-23 シーズンにW リーグに在籍した14 チームである.用いたゲームのスタッツは,4 Factor を参照した全14 項目とした.チームの特徴を視覚的に把握するために各チームの平均値行列にコレスポンデンス分析を行い,各チームの布置の特徴を「独自性」「顕著さ」から操作的に定義し,各チームの試合ごとの変化を2 次元布置の位置関係や軸の名称から検討した.その結果,オフェンスの特徴は,「3P」「2P」「消極的なオフェンス」「積極的なオフェンス」であり,ディフェンスの特徴は,「3P」「2P」「ディフェンスの成功」「フリースローの獲得」であった.事前に対戦相手を分析して,十分な準備のもとで戦うリーグ戦においては,対戦相手に応じた戦い方の優位性が示された
  • 世界トップレベルと国内大学レベルの比較
    廣瀬 恒平, 千葉 剛, 髙橋 仁大
    2025 年 17 巻 p. 107-118
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,世界トップレベルと国内大学レベルの比較を通して,タックル局面におけるパフォーマンスとプレーを成功させる要因との関連性を検討し,非トップレベルにも有用な知見を得ることを目的とした.分析の結果,以下のような知見が得られた.1)上体へのタックルの有効性は高い.2)非トップレベルにとっては,上体へのタックル比率を向上させることも重要であるが,上体および下体へのタックル両方の精度向上が課題である.3)タックルアシストの有効性は高い.4)国内大学レベルにおけるタックルアシスト発生比率は世界トップレベルよりも高い.5)非トップレベルにとっては,タックルアシストの精度向上が課題である.6)タックルアシストを可能な限り発生させながら,下体へのタックルを志向していくことが重要である.7)前に出る防御の有効性は高い.8)非トップレベルにとっては,防御ラインを整備するための時間的余裕を作り出すことが課題である.これにより,防御側の視点に立脚したゲーム構造としての「前進」,「支援」,「圧力」に含まれる各要素の改善が,「地域阻止」に貢献することが示された.
  • インシステムとアウトオブシステムに着目して
    田中 響, 髙橋 仁大, 坂中 美郷, 沼田 薫樹, 大工園 彩夏, 濱田 幸二
    2025 年 17 巻 p. 99-106
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,女子V リーグを対象に攻撃状況をインシステム(以下,IS)とアウトオブシステム(以下,OoS)に分類し,それぞれの攻撃状況におけるレフトからのレセプションアタックの成否に関わる要因を明らかにすることを目的とした.その結果,どちらの攻撃状況においても攻撃強度が最も成否に寄与することが明らかになり,さらにIS においてはブロック枚数,OoS においてはトス種類,攻撃位置がレセプションアタックの成否に寄与することが明らかになった.カテゴリースコアから詳細にカテゴリー別の貢献度を見ると,どちらの攻撃状況においても,攻撃強度の軟攻が負の値を示していたことから(IS:-1.951, OoS:-1.192),いかなる攻撃状況においても強打することを目指しながら,強打が難しい状況下においても,相手チームが攻撃しにくく,自チームが次のラリーを優位に展開できるような返球を行うことが必要になると考えられる.さらにIS においてはブロック枚数を少なくすることが決定に貢献し,OoS においてはオーバーハンドを用いてトスを上げ,スロット1 およびスロット2 から攻撃することが決定に貢献することが明らかとなった.
  • 菊政 俊平, 國部 雅大
    2025 年 17 巻 p. 88-98
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,野球の外野手が二者間に飛来する打球に対して,捕球する選手に関する判断を行う場面における選手間の位置関係や声かけについて検討することを目的とした.大学硬式野球部に所属する8 名(センター4 名,ライト4 名)を対象とし,実際のフィールドにおいて,センターとライトの間に打たれたゴロやフライをどちらの選手が捕球するかを判断し,実際に捕球を行う課題を実施した.その結果,両選手のインパクト時の位置から捕球位置までの距離の差が大きい(本研究では2m 以上)場合には,選手の位置関係や打球の情報に基づいて捕球する選手に関する判断を行っており,主に捕球位置までの距離が短い方の選手が捕球を行っていることが明らかになった.また,声かけについては,一方の選手が声かけを行った後に,もう一方の選手も声かけを行うことによって選手間での意思疎通を図ることが多く,特に捕球者が意思表示の声かけを行った後に,非捕球者が指示の声かけを行うパターンが多くみられることが示された.さらに,選手の位置関係や打球に応じて声かけのタイミングを変動させており,打球が両者の中間付近に飛来した場合ほど遅いタイミングで声かけを行っていることが示唆された.
  • 上位の公認スポーツ指導者資格を保有する指導者のアイデア
    村上 俊祐, 岡村 修平, 髙橋 仁大
    2025 年 17 巻 p. 74-87
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/21
    ジャーナル フリー
    トレーニングを効果的に推進するためには,まず目指すスポーツパフォーマンスの構造,すなわち設計図としての構造モデルを明示する必要があるといわれている(JSPO,2019).陸上競技の跳躍種目やスプリントなどの測定競技におけるパフォーマンスは,跳躍距離や走タイムといった明確な指標があることから比較的構造化しやすいと考えられるが,球技スポーツにおいてはそのパフォーマンス構造を戦術,技術,体力といった階層構造で捉える必要があるとともに,より抽象化した概念でパフォーマンスを説明する必要があるだろう.本論では,上位の公認スポーツ指導者資格を保有する著者がテニス競技のゲームパフォーマンスの構造化を試み,アイデアとして提示した.テニスの目的や仕組みといった抽象的な要素,そして具体的な試合技術としての戦略や戦術,その戦略や戦術を達成するための技術の詳細,つまり1 ショット1 ショットの技術構造というように,そのつながりやそれぞれの要素について概説した.著者が作成した可視化されたテニスのゲームパフォーマンス構造は,選手と指導者が共通理解を深める上で重要なツールとなり得るだろう
  • 中澤 翔, 杉田 正明
    2025 年 17 巻 p. 66-73
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,6 ヶ月以上にわたるEPA 摂取が血中EPA 濃度,EPA/AA 比,5000m 走記録に与える効果について検討することを目的とした.大学男子長距離走選手58 名(5000m 走記録14 分30 秒6 ± 30 秒0)を対象にした結果,(1)EPA の摂取群は非摂取群よりも血中EPA 濃度,EPA/AA 比が高く,(2)摂取群の血中EPA 濃度,EPA/AA 比,5000m 走記録は摂取前から摂取後にかけて向上した.(3)EPA 摂取した選手を事例的に分析した結果,EPA 摂取した時期から血中EPA 濃度,EPA/AA 比および競技記録の向上がみられた.以上のことから,EPA 摂取により,血中EPA 濃度,EPA/AA 比を高め,安全で良好なトレーニングを実施できたことが予想され,結果として,競技記録向上に効果がある可能性が示された.
  • 田中 耕作, 森 寿仁, 高井 洋平, 山本 正嘉
    2025 年 17 巻 p. 59-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,長距離ランナーを対象に,上り傾斜と水平面を交互に走るドリル(上り坂ドリル)が接地時の膝関節屈曲量(膝のつぶれ)を一過性に小さくするか否かを明らかにすることを目的とした.7名の長距離ランナーに,トレッドミル上で傾斜6% と傾斜なしを交互に4 回ずつ時速12 km で走らせた.その前後に,右側方からランニング時の映像を取得し,股関節,膝関節,足関節の座標を算出し,膝関節角度を算出した.膝のつぶれは,接地時から最大屈曲位までの膝関節角度の屈曲量で表した.その結果,膝のつぶれは,介入前で21.6 ± 6.0 度,介入後では18.5 ± 4.6 度で,有意に減少した.また,介入前の膝のつぶれの大きさがドリル後の変化率と有意な相関関係にあった(r = 0.82,p < 0.05).以上のことから, 傾斜と傾斜なしのランニングを繰り返すことで,平地でのランニング時の膝のつぶれが小さくなり, その大きさはドリル前の平地でのランニング時に膝のつぶれが大きいランナーほど改善が大きいことが示された.
  • 未熟練者との比較からみた技術検討
    東山 昌央
    2025 年 17 巻 p. 48-58
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/04
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本研究の目的は,登山熟練者と未熟練者の階段における昇段動作の違いを明らかにすることであった.そこで,男性登山ガイド1 名(熟練者)と,登山経験の少ない男性1 名(未熟練者)を対象に階段歩行実験を実施し,動作分析法により両者の違いを分析した.1)熟練者は未熟練者と比較して,股関節の伸展範囲が大きいことが確認された.また,重心の挙上時に,伸張- 短縮サイクル運動により,重心を効率よく挙上している可能性が確認された.2)熟練者は,足部接地後に,身体重心速度が抑制される局面がみられた.歩行動作のなかに筋の緊張を解く局面を設けることで,筋疲労の蓄積を効率よく抑制している可能性が考えられる.3)熟練者は,足部離地時における足関節の底屈動作が小さいことが確認された.これにより,転倒につながる蹴り出し動作を抑制し,安定性の高い動作を実現していると考えられる.以上,熟練者は,股関節の伸展,および伸張- 短縮サイクルの活用により,効率よく昇段動作を行っていること,動作のなかに筋疲労の蓄積を抑制する停止局面を設けていること,蹴り出し動作を抑制した安定性の高い動作を実現していることが可能性として考えられる.
  • 山口 裕太郎, 秋山 央
    2025 年 17 巻 p. 24-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー
    日本のバレーボール戦術の発展のためには,世界レベルの分析も重要であるが,国内に目を向けることが必要である.そこで国内トップカテゴリーのV リーグ(2019 ‐ 20season)を対象に,勝敗への影響が大きいとされる「アタック」について,試合の勝敗との関連を分析した.アタックを状況別に細分化し,項目ごとに分析することで,チーム作り等の指針を得ることを目的とした.結果では主に,レセプションの返球状況が良いインシステム時のクイックの使用,決定力,失点に関する項目と,攻撃状況に関わらず,ライトサイドでアタックを行うオポジットの試合を通じた働きが勝敗に大きく影響することが示唆された.攻撃状況が整ったときにクイックを使って得点をとり,乱れた状況下でオポジットが得点をとれるチームが試合に勝つ.国内のバレーボール構造を明確にした点で,非常に有意義な研究であったと考えられる.V リーグにおけるオポジットは外国籍選手が多く, 外国籍選手の能力がチームの勝敗を決定付けているといっても過言ではない.この研究を基に国内で勝つだけでなく,世界に通用するバレーボール構造を考えていく必要があるだろう.
  • 志々目 由理江, 藤田 英二, 小澤 雄二, 中村 勇
    2025 年 17 巻 p. 17-23
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー
    本研究は柔道選手における前腕筋群へのアイシングが,組み手時の相手柔道衣への把持時間に与える影響を検証することを目的とした.大学生女子柔道選手7 名(年齢:20.0 ± 1.2 歳,競技歴:12.3 ± 2.5年)を対象とし,前腕筋群の疲労を惹起させる課題運動と,実際の試合を想定した視覚障害者柔道ルールによる模擬試合を5 分間の休息を挟み行わせた.休息間に前腕筋群をアイスバスに浸すアイシング条件と,座位のみの安静条件の2 条件間で,模擬試合での引手側が切られた際の「始め」から「待て」までの柔道衣把持時間と,引手側が切られた回数を比較した.その結果,アイシング条件の柔道衣把持時間は安静条件よりも有意に長く(アイシング条件:18.8 ± 6.2 秒,安静条件:13.9 ± 3.9 秒),引手を切られた回数(アイシング条件:11.0 ± 2.6 回,安静条件:16.0 ± 5.4 回)も減少していた.これらの結果から,実際の柔道競技大会においても試合間に行う前腕筋群へのアイシングは,前腕筋群の疲労に対するリカバリー法として有効であり,試合時における組み手時の把持筋持久力低下を防げる可能性が示唆された.
  • 東京オリンピック日本代表選手を対象に
    碩山 莉穂, 山下 龍一郎, 金高 宏文
    2025 年 17 巻 p. 1-16
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー
    体操競技のターン技に関する研究知見や指導書は今から30 年以上前のものが多い. 30 年前と現在ではルールや技が大きく異なり,それに伴って技術や捌き方も変化している.そこで本研究では,平均台種目のしゃがみ立ち3 回ターンに関して,習熟者における動感の実践知を明らかにすることを目的とする.対象者は2021 年東京オリンピック日本代表選手1 名とし,聞き手2 名によるインタビュー調査を行った.インタビュー調査の結果,対象者の当該技の動感の構造が明らかとなり,腕の振り動作が技の成否を左右していると推察された.なお,対象者は軸を崩さないために腕の振り全般の動作を最大限の大きさやスピードで行わず,浮脚の振りも使って回転力創発を補っていたことが明らかになった.
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