本研究は,長距離ランナーを対象に,上り傾斜と水平面を交互に走るドリル(上り坂ドリル)が接地時の膝関節屈曲量(膝のつぶれ)を一過性に小さくするか否かを明らかにすることを目的とした.7名の長距離ランナーに,トレッドミル上で傾斜6% と傾斜なしを交互に4 回ずつ時速12 km で走らせた.その前後に,右側方からランニング時の映像を取得し,股関節,膝関節,足関節の座標を算出し,膝関節角度を算出した.膝のつぶれは,接地時から最大屈曲位までの膝関節角度の屈曲量で表した.その結果,膝のつぶれは,介入前で21.6 ± 6.0 度,介入後では18.5 ± 4.6 度で,有意に減少した.また,介入前の膝のつぶれの大きさがドリル後の変化率と有意な相関関係にあった(r = 0.82,p < 0.05).以上のことから, 傾斜と傾斜なしのランニングを繰り返すことで,平地でのランニング時の膝のつぶれが小さくなり, その大きさはドリル前の平地でのランニング時に膝のつぶれが大きいランナーほど改善が大きいことが示された.
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