オーストラリアでは、20世紀に約50万人の子どもが社会的養護の下で生活を送っていたとされている。2013年には、そうした子どもたちが受けた性的虐待を調査する、「子どもの性的虐待への組織対応に関する王立委員会」(以下、王立委員会)が設立された。王立委員会は、施設でおきた虐待の調査を焦点とする一方で、記録やレコードキーピングのコンサルテーションペーパーを公開し、過去や現在のレコードキーピングの実態や課題を報告している。この背景には、オーストラリアのアーキビスト協会の積極的な提言があった。
本稿では、王立委員会の虐待調査から見えてきた施設のレコードキーピングの課題と、虐待という大きな社会問題に対してのアーキビストの関与について考察したい。レコードキーピングを虐待の抑止力とするという考えは、児童虐待相談件数が毎年増加している日本においても参考にすべき余地があると考えられる。