2022 年 82 巻 p. 3-19
本論はロシア連邦のアーカイブズ管理体制とその特色を検討することを通して、国民的文化遺産としてのアーカイブズやアーカイブズの政治性という側面に着目する。第一に、「集中的管理」と「国家アーカイバル・フォンド」という概念を通して、帝政ロシア・ソ連のアーカイブズ管理体制からの継続性と断絶性を示す。第二に、1990年代の「アーカイブズ革命」の影響を検討し、2004年のアーカイブズ管理法の特色を分析することによって、新興ロシアのアーカイブズ管理体制の骨格を描写する。さらに第三に、1990年代から2020年代に至るまでのロシア連邦アーカイブズ管理局(ロサルヒーフ)の地位の変化、諸機能、課題を考察し、「集中的管理」の原則がいかに適用されてきたかを論じる。そこでは、ロシアの中央集権的な記録管理体制がもつ潜在的な長所(方針・規程の統一化・一元化)と短所(国家機構による中央集権化を触発する効果)に注目する。