根の研究
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原著論文
根系分布の品種間差異からみたテンサイの萎れ現象
伊藤 博武横田 和哉吉田 穂積小松 輝行
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2008 年 17 巻 3 号 p. 91-98

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抄録

淡色黒ボク土でテンサイ13品種・系統を栽培し, 猛暑となった2006年の高温乾燥条件への耐性と根系分布について調査した. 葉の萎れ程度には大きな品種間差が存在し, 他の品種が気孔を閉じて水分消失量を最小限に抑えても葉が激しく萎れてしまうような条件にあっても, 「カブトマル」の葉は萎れなかった. 葉の萎れ程度から「カブトマル」, 「スタウト」および「アセンド」を選び, 拡散伝導度を測定した結果, 高温・乾燥条件下では「カブトマル」は高い値を保ったが, 最も著しく萎れた「アセンド」では光合成速度が気孔全開時の50~60%に過ぎないとされるような低い値で推移した. また, 「スタウト」は両品種の中間の値で推移した. 根張りに着目してみると, 「カブトマル」は深い根張りであったのに対し, 「アセンド」と「スタウト」ではより浅い根張りであった. つまり, 垂直方向への根系分布が品種間で異なるテンサイでは, より深い根張りの品種ほど高温・乾燥時に深い層から多くの水分を吸収し, 萎れずに高温乾燥条件に耐えたと考えられる. 本研究を実施した北海道網走市では土壌条件が不利な地区ほどテンサイの根張りが浅く, 単位面積当たりの収量も低くなっている. 生育パターンの解析など検討すべき点も多く残しているが, 「カブトマル」の深い根張りという特性は収量の安定性向上への利用が期待される.

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© 2008 根研究学会
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