抄録
フィールドで根系の研究を進める場合,土壌中における根系の形態や分布を把握することが前提となる.これまで,根系調査法として様々なものが提案・利用されてきたが,十分に標準化が進んでいるとはいえない.そこで,著者らはフィールドにおける根系調査法の標準化を進めるため,改良土壌断面法を提案する.この方法では調査する植物体の近くに塹壕を掘り,土壌断面を整形した後,適当な間隔で土壌採取用の金属製円筒を打ち込み,根を含む土壌を採取する.丁寧に根を洗い出して,長さを測定して根長密度を求める.このようにして得られたデータから,根長密度の等値線を描いたり,根の深さ指数を算出すれば,根系形態の概要を把握できる.特殊な機械や器具を必要とせず,作業方法や指標の測定・算出を標準化しやすい.ただし,多くの時間と労力が必要で,対象植物に対して,どの位置に,どの方向で土壌断面を作製するかを考えないと,異なる調査の結果を比較対照することが難しい.また,単位面積当たりの根量の推定や,形成過程の解析には向いていない.必要に応じてコアサンプリング法と組み合わせることも現実的である.