根の研究
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ミニレビュー
地上部・地下部呼吸の芽生え~成木での変化
黒澤 陽子森 茂太
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2024 年 33 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

長寿の樹木の成長と適応は,個体呼吸で得られるエネルギーで支えられている.このエネルギーは水獲得と炭素獲得を担う地下部と地上部に配分され,その配分は成長過程でサイズに応じて変化する.しかし,広い成長段階で地下部・地上部全体の呼吸を実測した研究は殆ど無い.著者らはブナ (Fagus crenata) の吸水種子~成木377個体の地上部と地下部の呼吸,重量,表面積を実測した.この結果,地下部と地上部の呼吸速度と個体生重量の関係は,両対数軸上でそれぞれ上に凸と下に凸の非線形でモデル化された.これは,個体呼吸に占める地下部の割合が成長初期に増加し,成長後期に低下するためであった.しかし,成長初期の地下部の割合は,呼吸 (最大47.8%) よりも表面積 (最大78.2%) において大きく増加した.これは,芽生え期の急速で低コストな根表面積の拡大がその後の地上部成長を加速させることを示す.成木期には地下部成長の低下・飽和に続いて地上部及び個体全体の成長が低下することが示された.さらに,これらブナの個体呼吸は,ロシア~インドネシアの51種の芽生え~大木の個体呼吸の範囲内にあり,多様な系統や環境を包括した樹木の統一的な個体呼吸スケーリングの存在が示された.本稿では,個体レベルの地下部と地上部の関係を巡る研究を紹介し,樹木成長メカニズムを理解する上での根を含む個体呼吸の重要性を解説する.

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© 2024 根研究学会
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