抄録
森林の炭素循環において, 樹木の根, 特に細根の役割が重要であることが認識されており, 細根の動態をより正確に数値化することが求められている. 欧米では, この十数年の間に細根の動態を数値化するのに必要な, 細根の純生産性の研究報告が増加した. それには, 細根の純生産性の研究に有効な方法であるミニライゾトロン法の使用が大きく貢献している. ミニライゾトロン法とは, 地中に中空で透明なチューブを埋設し, その中に超小型カメラを挿入して土壌中を観察するシステムである, 日本では, 農地生態系で一年生の作物を用いた研究にミニライゾトロン法が用いられてきている. しかし, 日本の森林生態系での研究事例はなく, ミニライゾトロン法はまだなじみの薄い方法である. ミニライゾトロン法は, 地中に埋設したチューブ (中空な透明管) 内からチューブに接した土壌および細根の様相を画像として記録し, パーソナルコンピューターによって土壌中の細根を識別できるように画像を加工し, 根長・投影面積などを解析する, という手順で行われる. その数値を変換・換算することによって, 細根の純生産を概算することができる. 細根密度が低い林分では多数の画像データを記録し解析する必要があり, その作業時間が非常に長くなることがあるため, 解析作業の自動化が進められている.