根の研究
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根の水と溶質の透過性
ルートプレッシャープローブを用いた測定
宮本 直子
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2003 年 12 巻 2 号 p. 57-61

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抄録
水はアポプラスト経路と細胞横断経路を通って移動すると考えられているが, 根の表皮から木部導管まで移動する間にはさまざまな抵抗部位が存在する. ルートプレッシャープローブを用いた測定から, アポプラスト経路の水移動の調節は外皮や内皮のように疎水性のカスパリー線やスベリン層が発達した部位で行われていることが示唆された. しかしこれらの部位で全ての水がシンプラストへ移動するわけではなく, ある程度は水がアポプラストを通ると考えられる. イネの根をトウモロコシと比較すると, アポプラスト経路の水透過性が小さいことが明らかとなり, イネの根系の水輸送能力の低い要因のひとつはアポプラスト経路の抵抗が比較的大きいことであると考えられた. イネの根には派生通気組織が発達して多くの皮層細胞を失うが, 細胞横断経路の水輸送に大きな影響を及ぼしていないことが示唆された. ルートプレッシャープローブを用いると溶質の透過性と反射係数も測定できる. イネの根はトウモロコシに比較して溶質の透過性も小さく, 同時に反射係数も小さいことが明らかとなった. このことはイネの根は溶質を水と見分ける程度が低く, 同時に水と溶質の輸送自体は制限されていることを示している.
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