抄録
筆者らが最近開発したウンシュウミカンの周年マルチ点滴灌水同時施肥法 (マルドリ法と略称) では, 根域は年間を通して透湿性マルチ下に置かれ, 点滴チューブを用いて灌水施肥管理が行われる. 本試験においては, このようなウンシュウミカンの慣行栽培とは大きく異なる地下部環境が細根に与える影響について, いくつかの知見を得た. マルドリ法で3年間栽培されたウンシュウミカンにおける点滴孔直下では白い細根が密生しており, それらの細根径は慣行栽培樹ならびにマルドリ栽培樹の点滴孔から離れた位置における細根径よりも細いものであった. また, 点滴孔直下の細根の呼吸活性は慣行栽培樹の細根よりも高いことが明らかとなるとともに, マルドリ栽培樹の点滴孔から離れた位置の細根の呼吸活性も慣行栽培樹の根と比較して有意に高いものであった. これらの結果から, マルドリ栽培3年目のウンシュウミカンの細根は慣行栽培以上に健全であり, 呼吸活性の高い細い細根が増えることからマルドリ法が樹勢の維持に寄与するものと考えられる.