根の研究
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我が国におけるチャの根の生育, 根系形成に関する研究史 (その1)
山下 正隆
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2000 年 9 巻 3 号 p. 123-129

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抄録

我が国における茶生産の発展経過に基づき, I期: 1940年代前期以前の萌芽期, II期: 1940後半~1970年代の復興発展期, III期: 1980年代の拡大期, IV期: 1990年代の安定期の4つの時代区分を設け, チャの根の生育および根系形成に関する研究の流れと成果を編年的に整理した. 根に関する研究は, '40年代までは散発的に行われたに過ぎなかった. しかし, 戦後の新しい技術の導入・普及に伴って, '60年代以降, 徐々に根系形成, 根の生理等に関する研究がなされはじめ, 温度反応など根の基本的な特性解明が進められた. '70年代には, 収量, 品質と結びつけた根の栽培学的な研究が手がけられ, 以後の研究の大きな刺激となった. '80年代は, 茶の生産技術は向上したが, コスト, 環境との調和や食品としての安全性への関心が高まった。このような情勢の中で, 地上部の生育, 収量, 品質への根の役割が徐々に解明され, 積極的な根系の生育改善の意義・必要性が認識されてきた. '90年代は, 茶の生産が拡大期から安定期に移行した時期である. この時期には, 効率的, 環境保全的な茶栽培をめざして根の生育, 機能に関する研究が盛んになった. その結果, 根系改善を目指す基礎および実用技術研究, 簡便な根の調査研究手法の開発などが進められた. 今後の茶生産においては, 地上部, 地下部を含めて全体としての作物の機能をどう高めるか, またどう発揮させていくかが重要となるであろう.

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