2017 年 39 巻 1 号 p. 21-30
本稿は,日本初の高齢者インプロ劇団「くるる即興劇団」を事例として,同劇団におけるアクション・リサーチおよび劇団員へのインタビュー調査により,インプロの学習形態と,そうした形態によるインプロ実践がもたらす高齢者の変容について報告するものである.
同劇団の前身の講座「即興劇で学ぶコミュニケーション」および劇団化後の稽古ではワークショップ形式がとられ,そのなかで①全員,②2〜5人の小グループ,③全体を2グループに,④「舞台」と「客席」の4形態が,活動主旨や参加者の様子を踏まえ即興的に選択されていた.それにより,高齢者が,だれかに「見られる」感覚を負担なく体験できるほか,多様な参加者同士の触れ合いとゆるやかな関係の構築が可能となっていた.
また,インプロを通して,高齢者は,新たな表現を生み出す要素として「失敗」を肯定的にとらえ,パフォーマンスの際に自分をよく見せようとせず,共演者とのかかわりを重視するようになった.