宗教研究
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宗教生活から生活宗教へ : 四世紀シリア・キリスト教の転換(<特集>「生活の宗教」としてのキリスト教)
武藤 慎一
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2003 年 77 巻 2 号 p. 295-316

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抄録

四世紀はローマ帝国のキリスト教にとって、少数派の宗教者だけの宗教から一般大衆の宗教への転換期にあった。その推移を体現している人物が、シリアのヨアンネス・クリュソストモスである。本研究は生活に関する彼の思想を通して、この転換を考察する。それによると、「生活的なこと」と「霊的なこと」との明白な対立が出発点にある。まずは、生活から脱却して宗教に向かうこと、次に宗教によって生活を清めること、そして生活によって宗教を示すことで、その対立を超えることができる。こうして彼は、修道という宗教のみの生活を超え、世俗の生活的な宗教を拒否し、宗教的な生活を世俗にもたらそうとした。クリュソストモスは、表のキリスト教徒が世俗の生活自体をやめることを求めない。また、世俗的に生活することも、勧めていない。敢えて、世事にまみれた日常生活のただ中にあって宗教的に生活する、という第三の道を勧め、自ら身をもって示した。

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© 2003 日本宗教学会
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