宗教研究
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論文
  • 『我と汝』刊行一〇〇年に寄せて
    堀川 敏寛
    2024 年 98 巻 3 号 p. 1-23
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿では、マルティン・ブーバーが執筆した『我と汝』(一九二三年)の刊行一〇〇年を契機に、新版著作集「対話的原理論文集」や「哲学と宗教論文集」の注解や序論を参照する。そしてブーバー我-汝思想の焦点がこれまで評されてきた対話論ではなく、他者論でもなく相対的存在間の関係論であることを述べる。次に、その思想を学問的に位置づけるという目的は、哲学ではなく、哲学的人間学であり、それは宗教性とも切り離せない具体的な体験を基にした我-汝の関係を焦点とすることを主張する。ブーバー思想の焦点は、第一に、彼が限定的な意味での哲学を否定的に評していたとおり、主-客分離的な抽象化や対象化を批判することである。第二に、他者からの語りかけという関係性が存在者よりも先行しており、その関係に向かって自らを向けて出会うことの大切さである。これは我-それの問題と我-汝による解決というブーバーの根本的な問題設定である。

  • 丸山 空大
    2024 年 98 巻 3 号 p. 25-50
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/03/30
    ジャーナル フリー

    宗教を、世界観とエートスをあたえる象徴の体系として定義するクリフォード・ギアツの宗教論は、現在でもしばしば肯定的に参照される。しかし多くの場合、ギアツに向けられた重要な批判は十分に検討されないし、そればかりか、ギアツの宗教論の全体像が考慮に入れられることもほとんどない。その結果、参照の形式が単調になり、ギアツの理論自体が魅力を欠くもののように見えてくる。とはいえ、非西洋地域における宗教の近代化を、西洋地域の近代化と対照しながら大胆に論じるギアツの議論はいまなお興味深い。本稿はまず、タラル・アサドの議論を敷衍しながら、ギアツの宗教論に対する批判点を確認する。つづいて相対主義や特殊主義を退け、宗教や人間についての一般的知を獲得しようとするギアツの学問的構想を明らかにする。最後に、小著『イスラームを観察する』に展開された、非西洋地域における宗教の近代化を主題とする彼の宗教論を検討したうえで、今日、批判をふまえどのような参照の仕方がふさわしいか考察する。

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