宗教研究
Online ISSN : 2188-3858
Print ISSN : 0387-3293
ISSN-L : 2188-3858
最新号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • 『アクバル注釈』における自説の正当化方略
    松山 洋平
    2025 年99 巻3 号 p. 1-24
    発行日: 2025/12/30
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿では、十六世紀から十七世紀初頭を生きたオスマン朝の神学者アリー・アル=カーリーの『アル=フィクフ・アル=アクバル注釈』およびその補論『目的の充足と信条の完成』における「信の増減」をめぐる議論を考察した。カーリーは、「信(=是認)は増減しない」とするマートゥリーディー派古典期の教説から離れ、「信の対象」や「是認の基盤部分」は不変であるとしつつも、「是認」や「確信」の度合いに応じて「信」は増減するとの立場を示した。カーリーは、この立場を正当化する過程で、ハナフィー派学祖アブー・ハニーファの権威に訴えると同時に、アシュアリー派の神学者たちの見解を頻繁に引用し、自説と彼らの教説が一致するものであることを強調した。さらに、神学派の紐帯を横断する正当性を持ち得るスーフィズムの教説も利用した。このような正当化の方略は、アシュアリー派的なパラダイムが優勢だった時勢において、マートゥリーディー派の学統に連なりつつも、実質的にアシュアリー派と一致する解釈を支持するために生まれたものである。

  • 菊地 智
    2025 年99 巻3 号 p. 25-48
    発行日: 2025/12/30
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    十四世紀ブラバントの神秘思想家ヤン・ヴァン・リュースブルクのghemeyn leven(コモン・ライフ)は、観想と活動の二つの局面を有する三位一体の神に一致した、修道生活の理想を伝える教説として一般に理解されている。しかし、彼の作品中でghemeyn(コモン)の語が用いられる多様な文脈、とりわけこれまで注目されることのなかった教会論的文脈をも視野に入れれば、ghemeynの概念を軸にして、神と個人とのあいだの一致の関係ばかりでなく、教会共同体の全構成員――父・子・聖霊、聖人、聖職者、信徒――の関係を〈分かち合いの交わり〉として捉える広い射程を有した〈コモンの思想〉の姿が浮かび上がって見える。本稿はリュースブルクにおけるghemeyn概念の用例を分析しながら、深刻な分断の時代にあった十四世紀のキリスト教世界の中に結晶した独創的な教説として、その〈コモンの思想〉を捉え直す。

  • 筆禍事件以降の久米邦武における神道観の変遷
    木村 悠之介
    2025 年99 巻3 号 p. 49-73
    発行日: 2025/12/30
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿では、一八九一年執筆の「神道は祭天の古俗」と翌年の筆禍事件で知られる歴史学者・久米邦武が、東洋の儒教と西洋のキリスト教に挟まれた日本の「宗教問題」に取り組むなかで、神道観をどう変遷させたかをたどる。久米は祭天論文において、忠孝、特に孝思想に対する従前からの違和感や当時の条約改正問題を背景に、神道唯一神教化と祖先祭祀否定を説いた。これに対し、一九〇二年の『日本古代史講義』以降は神道を論じるうえで「祖先崇拝」の位置づけが高まり、集権的な国民秩序や天皇神聖化への志向も見える。しかし最晩年にあたる一九二三年の「神社の起源」では、再び古代の神社における祖先崇拝の存在を否定するに至った。儒教とキリスト教における祖先や「人」の要素を拒否し、天を強調したのである。井上哲次郎の協力者として久米や鳥居龍蔵を批判した堀岡文吉が、敗戦後に往時の久米と似た主張を打ち出した点にも、同様な「天」への転回が見てとれる。

書評と紹介
feedback
Top