宗教研究
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カトリック教会共同体の多文化主義的マネジメント : 現代日本における可能性(<特集>「生活の宗教」としてのキリスト教)
寺尾 寿芳
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2003 年 77 巻 2 号 p. 369-391

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抄録

現代日本におけるカトリック教会が秘めるNPO的な可能性に配慮しつつ、宗教経営学の観点からことにその組織マネジメントを模索していく。現代の教会は、成長期であった戦後復興期と同様に生活上での激変つまり生活有事といえる事態を迎えるなかで、変革への条件を満たしつつある。また伝統的な小教区教会とその周辺に発生する諸共同体を加えた拡大形態を教会共同体と名づけるが、そこでは外国籍信徒の生活有事を背景とした流入により、「無縁」の原理さらにはコムニタスを体現したアジールたることが要請され、また文化相対主義に通じる多文化主義を採用せざるをえない現状を呈している。聖職者や修道者は場のマネジメントにおいてファシリテーターであり、現場の状況に添った形で教会共同体を運営する。ことに司祭は外部の公共イベントへの参加などを通じ、社会的認知の獲得のため、開かれた祭儀を企画するプロデューサー的機能を発揮する。このような視圏を提供する宗教経営学は共生の技法と呼べるものであろう。

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© 2003 日本宗教学会
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