宗教研究
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大正期の「精神」概念 : 大本教と『変態心理』の相剋を通して
兵頭 晶子
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2005 年 79 巻 1 号 p. 97-120

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抄録
大正期、憑霊の行法としての鎮魂帰神法を大々的に喧伝した大本教は、その憑霊の是非をめぐり、日本精神医学会の機関誌『変態心理』から激しい弾劾を受けることとなる。従来、この弾劾は、「科学」による邪教・迷信打破の一環として評価されてきた。しかし、弾劾する側の『変態心理』が標榜する「精神医学」とは、今日の精神医学と決して同義ではなく、当該期の精神病学を含めた正統医学界を「物質医学」として批判するための反命題に他ならない。そこで新たな「心理」学の登場を促した催眠術や潜在意識は、スピリチュアリズムを復権させる装置でもあり、その潮流において再発見された鎮魂帰神法とは、重なり合う部分があるゆえの近親憎悪的な関係にあったのではないか。こうした観点から本稿では、大本教と『変態心理』の背後にある共通の磁場としての「精神」という潮流に焦点を当て、両者が実際には何をめぐって争い、その帰結はどこへ行くのかを検討する。
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© 2005 日本宗教学会
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