宗教研究
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神仏習合と多配列クラス(<特集>神仏習合とモダニティ)
白川 琢磨
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2007 年 81 巻 2 号 p. 235-258

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抄録

明治初年に断行された「神仏分離」政策は、それまで千年以上続いた我が国の宗教環境を一変させた。それ以前の宗教的状態を一言で言い表すなら「神仏習合」ということになるがその記述には困難を伴う。その理由は、この両者を規定する認識の違いに求められる。神仏分離は、今日の我々が馴染んでいる近代的・科学的認識(単配列分類)に基づいているが、後者はそれとは別の分類に基づく可能性がある。人類学者R・ニーダムは、それに対して「多配列分類」という概念を呈示している。神仏習合を多配列クラスとして捉えることができるのか。歴史学者、黒田俊雄が呈示した歴史的に実在した「寺社」及び「顕密」という範疇を、多配列クラスとして捉える試みを具体的実例をもとに検討する。その結果、それらは組織(寺社)及び内容(顕密)の両面において伸縮自在の多配列クラスを構成しており、それは今日の我々を取り囲む諸種の宗教民俗にも及んでいる可能性があることを指摘した。

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© 2007 日本宗教学会
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