宗教研究
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神仏隔離の要因をめぐる考察(<特集>神仏習合とモダニティ)
佐藤 真人
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2007 年 81 巻 2 号 p. 359-383

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抄録

神仏隔離の意識ははやく『日本書紀』の中にも認められており律令神祇制度の形成期から神道の独自性を支える要素であったと推測される。神仏習合が頂点に達した称徳朝に道鏡による宇佐八幡宮託宣事件が王権の危機を招いたことにより神仏隔離は一層進展した。天皇および貴族の存立の宗教的根拠である天皇の祭祀の場において仏教に関する事物を接触させることは、仏教的な国王観の受容を許すことになる。そこに神仏隔離の進展の大きな要因があった。さらに九世紀には『貞観式』において、朝廷祭祀、とりわけ天皇祭祀における隔離の制度化が達成された。この段階では平安仏教の発達によって仏教が宮中深く浸透したことや、対外危機に起因する神国思想が作用したと考えられる。平安時代中期以降は、神仏習合の進展にもかかわらず、神仏隔離はさらにその領域を広げていった。後世の展開を見ると神仏隔離は天皇祭祀の領域に限られるものではなく、貴族社会に広く浸透しさらには一般社会にも規範として定着していき今日の神道を形作る大きな要因となった。

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