宗教研究
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近代仏教の自画像としての護法論(<特集>神仏習合とモダニティ)
森 和也
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2007 年 81 巻 2 号 p. 411-436

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抄録

従来は消極的な評価ばかりを与えられている、排仏論に対抗して生み出された護法論という言説の積極的な意味づけを考えた場合、それは仏教の自己認識、すなわち自画像であると考えられる。その中から読み取れる仏教の日本における自らの存在証明として、近世、近代の仏教者たちに多く見られるのは、天皇との関係性の強調であった。この天皇との関係性は天皇の崇仏の歴史および日本という国土との結びつきにおいて確認されている。明治政府が意図した天皇中心の国民統合に近代の仏教が奉仕することになったのはそのためであったが、仏教、神道、キリスト教は相互に習合するのではなく、天皇に各々が個々に結びつくことで近代の宗教体制を構築したのである。

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