宗教研究
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日本宗教学への期待(現代社会における宗教学の役割を問う,<特集>第六十七回学術大会紀要)
橋爪 大三郎
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2009 年 82 巻 4 号 p. 827-842

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抄録

西欧をはじめとする世界の多くの社会と異なり、日本では宗教の社会的地位が低い。特定の宗教を信じる人びとは少数で、多くの日本人は宗教と距離をとり、自分は無宗教の現実主義者だと思っている。だが実際には、日本社会は、特異な宗教的伝統のもと、それなりに濃密な宗教体験にいろどられている。日本宗教学は、特定のマイナーな宗教ではなく日本社会の宗教体験の総体を、考察の対象とすべきだ。とりわけ、プレ近代の武家政権のもと、仏教・儒教・国学が断片化しハイブリッド化し、日本のネイション形成の土壌となったことは重要である。世界的な文脈のなかで、こうした日本社会の特異な宗教性を、普遍的な記述と説明に開いていくことを、日本宗教学に期待したい。

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© 2009 日本宗教学会
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