宗教研究
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西田幾多郎の『善の研究』とウィリアム・ジェイムズ
横田 理博
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2009 年 83 巻 3 号 p. 789-811

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抄録

西田幾多郎の『善の研究』がウィリアム・ジェイムズからの大きな影響のもとに成立したことは周知である。これまでの研究では、両者の「純粋経験」概念の共通性と異質性とが問題とされてきた。しかし、本稿は、従来の研究が「純粋経験」に関心を向けてきたがゆえに、西田とジェイムズとの本当の関係が見失われてきたのではないかという疑念のもとに、次の二点に光をあてる。第一に、両者は「神人合一」の「宗教的経験」という状態を宗教論の中心に置いた。とはいえ、ジェイムズの考察が経験科学的な宗教心理学の立場であるのに対して、西田は独自の宗教哲学を語ろうとした。第二に、科学の抽象性よりも現実そのままの豊かな光景を本質的なものとするフェヒナーの思想に両者は共感している。しかし、ジェイムズが「多元論」的立場をとるのに対して、西田は「一元論」的な立場をとる。

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© 2009 日本宗教学会
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