宗教研究
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現代スーフィズムをめぐる諸言説 : 西欧の期待とそれへの応答
高尾 賢一郎
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2009 年 83 巻 3 号 p. 883-904

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抄録

本稿は近年の西欧の研究に見られるスーフィズム(イスラーム神秘主義)についての言説に着目し、そこに見られるスーフィズムへの期待と、スーフィズム側からの応答の呼応関係を通して形成される、スーフィズムの今日的な存在意義の主張の一形態を示すことを目的とする。それらのスーフィズム研究は、スーフィズムが世俗化されたキリスト教社会とイスラームとの関係構築の中で重要な鍵になるとし、それが「原理主義」と相対するものであるとの期待を寄せる。それに応じるかのようにハーレド・ベントゥネスやアフマド・クフターローといった一部のスーフィーは、対話を通した歩み寄りによって西欧社会との協力的な関係の構築を図っている。そこには必ずしもスーフィズム固有の、内在的な思想による議論の展開が多くあるわけではないが、現代的なスーフィズムの在り方とその存在意義が主張されている様を見ることができる。

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© 2009 日本宗教学会
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