宗教研究
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祖先祭祀の「文明化」 : 穂積陳重を事例として
問芝 志保
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2014 年 88 巻 1 号 p. 25-47

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抄録

「文明国」を目指した明治期日本において、祖先祭祀の認識はどのように変化したのか。本稿ではその一事例として、明治民法編纂主査委員であった穂積陳重における、祖先祭祀の説明の変化の過程を、時代的背景や彼の遍歴との関わりにおいて検討する。陳重は当初、祖先祭祀を中心とする制度や慣行は古代社会の一宗教であり、社会進化とともにその役割は弱まると理解していた。しかし明治民法の基本原理が祖先祭祀にある理由を西洋に対して弁明する場において、彼は進化論人類学の観点から祖先祭祀の普遍性や有益性を説き起こし、また日本の祖先祭祀についての体系的な説明を行った。大正期には、祖先祭祀を「宗教」から切り離し、「道徳」や「敬愛」として保持する日本の優位性をアピールした。こうした、「文明」に資するものとしての祖先祭祀の語り直しは、西洋的眼差しに対峙した非西洋側による自己表出の一つとして捉えうるであろう。

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© 2014 日本宗教学会
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